外信コラム 南部白人の素朴な心情(産経新聞)
https://news.yahoo.co.jp/articles/9938a92b3af7e9096577f6a7df486236541c251e

「今晩泊まるところあるの? よかったらうちに来なさい」。南部ジョージア州の連邦上院選の決選投票の取材で共和党候補の集会を訪れた4日夕。赤いシャツ姿のドリス・ランディーンさん(75)から声をかけられ、首を縦に振った。

ドリスさんの車の先導で着いたのは、丘陵地の豪邸。広い応接間でドリスさんの思い出話を聞いた。

案内されたゲストルームの壁に勲章。第二次大戦と朝鮮戦争に従軍した父親のもので「父は戦場のことは語らなかったけど死後、勲章がたくさん見つかったので額装したの」

人種隔離が残っていた南部アラバマ州出身で、「子供のころ黒人とトイレが別だったのを覚えている」

父親の影響でドリスさんも陸軍基地の事務官として働く。遺産と退職金で15年前に邸宅を購入した。「当時この辺りは白人しかいなかったけど、今では豊かな黒人も住むようになった」

夫のゲイロードさん(78)は会社員時代にアトランタのCNN本社に大型衛星アンテナを納入したことを誇らしげに語る。だが家では保守系のFOXニュースしか見ない。「民主党政権が続くと米国が変わってしまうのが心配」と夫婦は眉をひそめた。

翌朝、ドリスさんとハグして別れた。南部の伝統的な白人層の素朴な心情に触れた気がした。(渡辺浩生「ポトマック通信」)