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人気保育園で信じがたい行為 背景に規模拡大で「目届かず」 裾野・虐待、3保育士逮捕1週間

裾野市の私立さくら保育園の園児虐待事件は、当時の保育士3人の逮捕から11日で1週間を迎える。子供を守るべき保育士の虐待行為が明らかになり、隠蔽(いんぺい)が疑われる園の対応と体質にも批判が集まっている。地元で人気の保育園で行われた信じがたい行為の背景に、事業規模拡大の弊害を指摘する声も上がる。

 「組織が大きくなる中、園長に権力が集中していた。現場に目が行き届かなくなり、保育の質が低下したのは否めない」。同園を運営する社会福祉法人桜愛会(同市)の元幹部の男性は、ここ数年の変化に懸念を抱いていたという。



 ■ベテラン大量退職

 さくら保育園の開設は1981年。延長保育や0歳児保育をいち早く受け入れ、「入園希望者が多く、なかなか入れない保育園」(元保育士の女性)として知られた。

 創業家出身の利彦園長は2009年に就任し、その後、桜愛会の理事長を兼ねた。18年には市立保育園と児童館の指定管理者になり、その民営化に伴って事業を承継。乳幼児施設4カ所を運営するようになった。

 民間信用調査会社によると、18年3月期に2億7200万円だった法人の売上高は22年3月期に5億4100万円と倍増。一方で評議員の若返りを図り、ベテラン保育士が大量退職した。関係者によると、「上に意見を言えない組織風土が浸透していた」とされる。

 暴行の容疑で裾野署に逮捕されたのは女(30)=沼津市岡宮=、女(38)=裾野市平松=、女(39)=長泉町上土狩=の3容疑者。1歳児クラスを受け持っていた。園や市によると、「足を持って宙づりにする」「カッターナイフで脅す」など16事例の虐待が繰り返されていたとみられる。



 ■「組織的隠蔽疑惑」

 正規職員でクラス責任者だった女(30)と臨時職員の女(38)は5年以上、派遣職員の女(39)は3年ほど園に勤務。3人を含む計6人の保育士で1歳児23人を担当。関係者によると、ほかの3人は年齢が若く、虐待行為を現認しながら3容疑者を止められなかったとみられるが、被害に遭った園児に優しい声を掛けたり、寄り添ったりしていたという。

 3容疑者の行為を園長らに報告したが、「改善されなかった」との証言もある。一連の行為が発覚した後、園長が全職員に「機密事項をもらさない」との誓約書を書かせ、市に告発しようとした同僚保育士の前で土下座したことも判明。村田悠市長は「組織的に隠蔽しようとした疑いがある」とし、犯人隠避容疑で園長を刑事告発した。



 ■職場改善へ有意義な研修を

 常葉大の柴田賢一教授(保育学)の話 保育現場でもICT(情報通信技術)対応などの変化が求められる中、コロナ禍で業務量は増えている。3歳児以上のクラスでは、1人の保育士が見る子供の数が多い「配置基準」も指摘されている。

 不適切な保育を防ぐ鍵は園の組織風土。現場の保育士から主任、園長へと報告がしっかり上がり、上も若手の声に聞く耳を持ってほしい。意見を言いやすかったり、互いにフォローしたりできる職場環境が重要だ。

 そのためにも研修が大切になる。園内のコミュニケーションを円滑にし、子供の尊厳を守るための園の方針が全職員に伝わるよう目的意識を持った研修に取り組んでほしい。