山を買った30代夫婦 作り上げた「理想のキャンプ場」は今も進化中

テントを張って静かに過ごせる場所を作ろうと、兵庫県北部・香美町の「山」を買った。広さ約13万坪、東京ドームおよそ9個分。大阪府出身の上山恭平さん(31)知沙子さん(30)夫婦が山林を切り開き、「おじろじろキャンプ場」を始めたのは2021年春だった。
2人は25歳の頃に結婚。恭平さんは市役所勤めの公務員、知沙子さんはエステサロンで働いた。住んでいたマンション1階の小さな庭にテントを張って遊び始め、キャンプ好きに発展した。キャンプの魅力を「大自然の中でテントにこもってゲームをすること。虫も嫌いで、実はインドア派なんです」と笑う。
いつしか「理想のキャンプ場」を夢見るようになった。夜、他人の話し声が聞こえない静かさがある、トイレがキレイ--。「自分らで作ったら最高のキャンプ場になるんちゃうか」。それなら「まず山を買おう」と妄想を行動に移した。下調べに2~3カ月かけ、18年冬、800万円で今の山林を買った。
仕事がない休日、現地に通った。水道も電気もない。中古のパワーショベルを買って土を掘り、チェーンソーで木を切った。排せつ物は土に埋めて処理した。管理棟小屋を自作し、仮設トイレを設置。約2年半の整備を経て、仕事を辞めた2人はキャンプ場の管理者になった。
広大な土地に広々とテントを張れて、静かに過ごせる。冬は2~3メートルの雪が積もることもあり、オープンしているのは春から12月ごろまで。それでも21年は約300組、22年は約700組のキャンパーが泊まった。
収入は勤めていた頃の半分程度になった。ただ、自由と感じられる時間は増えた。「仕事を続け大阪でマイホームを買って、という路線も考えたことがある。でも、こっちを選んでよかった」
今、キャンプ場はトイレ棟を建設中で「プレオープン」期間中。「無人チェックインの仕組みも取り入れたい。働く時間を短くして、自由な時間を確保すれば、ゲームの時間に充てられるし」。そう言って笑い、今も理想のキャンプ場作りにいそしんでいる。【巽賢司】

https://news.yahoo.co.jp/articles/a47f93e9b69e75edd6c71654fedca1a7c05867c0