いま私は、この原稿を都心で区が管理する公園のすぐ近くの一室で書いている。ここを仕事場の拠点にして久しい。公園の周辺には昔ながらの夜の店も建ち並ぶが、交通の利便性もよく、昼間は静かで過ごしやすい。

 ところが、この公園でいきなりイベントを開催することがある。マイクを使った司会進行で、和太鼓を叩いてみせたり、歌ったり、踊ったりする。主催者側は地元活性化のつもりらしい。周辺にはワンルームマンションも建ち並ぶようになったから、その音が反響して仕事にならない。

 やめろ、とは言わないが、せめてイベントの事前予告くらいはチラシでポスト投函して欲しいものだ。むしろ、そうやって参加を呼びかけたほうが、活性化も期待できる。

 ところが、そういうことをある機会に話したら、地元の出身者だったり、主催する飲食店の関係者だったりからは、嫌だったらお前が出ていけ、といわれて嫌な思いをしたことがある。マンションの戸数も増えて転入者のほうがマジョリティーになりつつある。青木島のたった1軒の住民の気持ちも理解できる。

 そんな私を慮ってか、同じ建物にずっと長く暮らす年配の女性がこう教えてくれた。

 昔は学校が夏休みになると毎朝、この公園で子どもたちのラジオ体操が行われていた。みんな参加の判子をもらいに来て喜んでいた。それがある時、朝からうるさい、眠れない、という飲食店の店主たちから苦情が入って、それからなくなってしまったという。

 夏休みのラジオ体操が消えて行くのは、子どもの数が減ったことばかりが理由ではなかった。大人の事情が絡んでいる。とすれば、子どもたちのイベントは許されないが、俺たちのやることには黙って我慢しろ、とでもいうのだろうか。それこそ横暴というものだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/4306d44d977d859592200fb3c3bbb93d3fcdc54b?page=3