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井上尚弥「4本あって気持ちいい」 世界初「全KO奪取」に感無量「最高の景色を見た」
 ボクシングのWBAスーパー&IBF&WBC世界バンタム級(53.52キロ以下)3団体統一王者・井上尚弥(大橋)が13日、東京・有明アリーナでWBO世界同級王者・ポール・バトラー(英国)との4団体王座統一戦に臨み、11回1分9秒KO勝ちした。軽量級初、アジア人初、世界9人目の4団体王座統一の快挙に加え、世界初の「4団体全KO奪取」の大偉業を達成。試合後は会見で想いを語った。戦績は29歳の井上が24勝(21KO)、34歳のバトラーが34勝(15KO)2敗。

 歴史が生まれた。終始、井上が攻め続ける展開。バトラーはガードを固め、足を使って距離を取る極端な防御重視の展開だった。2回、井上が左ボディーを軸にしたコンビネーションを炸裂。相手の反撃も上半身を引いて回避し、完全に主導権を握った。中盤も亀になる相手に対し、井上は多彩なパンチ、サウスポー、ノーガードで誘って揺さぶる。それでも乗ってこない相手に笑みを浮かべた。

 7回はノーガードに加えて頭を近づける。中盤には両手を広げ、“打ってこい”とアピールした。8回には後ろに手を組んでまで挑発。なかなか出てこない相手に対し、均衡が破れたのは11回だった。ロープに詰めると、左右のボディーからフックで猛連打。最後は左フックの連発でダウンを奪い、そのまま決着した。リング上で飛び跳ねて喜ぶモンスター。歴史がつくられた瞬間だった。

 井上は試合後の会見で第一声に「いやぁ、でも久々に11ラウンドを戦って疲れましたね(笑)」と吐露。「攻めて、攻めて、攻めたんで。でも、ここに4本のベルトがあって気持ちいいです」と感無量の様子で目の前のベルトに目をやった。勝敗を分けたポイントには「やっぱりキーは左ジャブ。試合前からここだけは絶対に勝つと思って練習した。かなりダメージを与えられた。ここがキーだと思う」と振り返った。

 判定決着の雰囲気も醸し出した一戦。その中で仕留めきり、「この戦いに向けて必ずKOで勝つと準備していた。判定ならやり切れない気持ちでいっぱいだった」と苦笑い。「その中で11ラウンドにギアを上げて倒し切れたのは自分の中で収穫です」と胸を張った。

 転向を見据える1階級上のスーパーバンタム級には、WBC&WBO王者スティーブン・フルトン(米国)、WBAスーパー&IBF王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)が君臨している。今後について「バンタム級4団体統一という目標を成し遂げたので、この階級で成し遂げたいことはない。ゆっくりして会長、父と相談しながら今後どうしていくかちゃんと話し合っていきたい」と明かし、こう続けた。

「ここがゴールではない。会場に足を運んでくれたファンがリングから最高の景色を見せてくれた。自分としては通過点なので、満足はしていますけど、次に向けて切り替えていきたい」

 歴史的偉業を成し遂げた直後、モンスターはすでに次の景色を見ていた。