北海道・知床半島沖で観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没した事故を巡り、国の運輸安全委員会は15日、中間的な報告にあたる「経過報告」を公表した。

経過報告は、乗客の様子についても触れた。
また、船内から回収された乗客のカメラに残されていた記録媒体のデータを復元したところ、事故当日に船上から撮影した画像があったことも明らかにした。

カズワンはウトロ漁港(北海道斜里町)を4月23日午前10時ごろに出発。約1時間後、豊田徳幸船長=死亡=はクマを目撃したという話をアマチュア無線で同僚にしていた。

午後1時ごろに乗客の一人が携帯電話で親族と話し、下船後に昼食にすることなどを伝えていた。この頃は変わった様子はなかったとされる。

しかし5分後、豊田船長は「ちょっとスピードが出ないので、戻る時間、結構かかりそうです」と同業他社の関係者に連絡を入れた。

その後、「船が浸水してエンジンが止まっている」と事態の悪化を伝えてきたという。

さらに午後1時20分ごろには、乗客の一人が「船が沈みよる。今までありがとう」と携帯電話で親族に告げた。別の乗客も同じ頃、親族に電話でこう伝えたとされる。

「船首が浸水して船が沈みかかっている。浸水して足までつかっている。冷たすぎて泳ぐことはできない。飛び込むこともできない」

運輸安全委の調査で確認された乗員や乗客の通話などはこれが最後で、カズワンはこの後間もなく沈没したとみられる。