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1989年に3%の税率で導入されて以降30年余の間、国民のほとんどが、当たり前のように信じてきたのが「消費税は預り金」という説明だ。

 しかし、少なくとも消費税法の規定からは、消費税を「預り金」と解する余地はない。過去の訴訟では、政府側が、「消費税は取引の対価の一部であり、預り金ではない」と主張し、裁判所もそれを判決で認めている。

 経済評論家の三橋貴明氏、藤井聡京都大学教授や、一部の税理士などから、「消費税は預り金ではない」という指摘が行われているが、新聞、テレビなどの大手メディアで、そのような話が取り上げられることはほとんどない。

 「消費税は預り金」だという認識は、1988年の消費税導入の際から、国民に受け入れさせようとする大蔵省(当時)・国税当局が行ってきた「キャンペーン」によって生じたものだ。

 消費税は、バブル景気の最後の時期に導入され、その後、バブルの崩壊による長期化するデフレ不況下で引き上げられ、第2次安倍政権下でさらに引き上げられる中で、「消費税は預り金」という、法律上は誤った認識が、様々な影響を生じさせてきた。

 「消費税は預り金」との認識によって生じている影響を、今、改めて問い直す必要がある。それは、インボイス制度の導入の是非という当面の問題だけではなく、消費税を今後どうしていくのか、という根本的な議論においても欠くことができないものだ。

間接税とは、担税者(税を負担する者)が直接税金を納めず、事業者などの納税義務者を通じて納める租税のことを言う。日本の「消費税」は「間接税」とされてきたが、それは、「消費税は、事業者が納税義務者だが、税を負担するのは消費者」との理解を前提にしている。

 税の負担者が「入湯者」であり、納税義務者が「浴場の経営者」であることが、法律で明確に規定されている「入湯税」などは、典型的な「間接税」だと言える。
一方、「間接税」と言われる税の中には、「税の負担者」が、法律上明確に規定されておらず、税負担が事業者側のコストに含められて最終的に消費者に転嫁することが予定されているに過ぎないものがある。

 欧州諸国の多くで導入されている「付加価値税」がそれであり、製造から小売に至る多段階で課税される。それに対して、米国の「小売売上税」は、小売の取引段階にのみ課税される。日本の「消費税」は、前者の