男性芸人によるチームプレー、観客は女ばかり…語られてこなかった「アメトーーク!」の“負の遺産”

 13年ぶりの女性コンビの決勝進出や、フレッシュな決勝進出者の面々、
山田邦子の審査員就任などで大きな注目を集める2022年の「M-1グランプリ」(テレビ朝日系)。

 容姿いじりや社会属性へのいじりが世間から敬遠され、YouTubeやSNSが大きな影響力を持つようになるなど、
お笑い業界が大きな変化の渦中にある中で、M-1はどう変化しているのか。
(中略)

 そうした時代を経て、今、女性芸人の数がすごく増えている一方で、それが必ずしもキャスティングにつながっていっていない現状はあるのかなと。
以前能町さんがツイッターでおっしゃってた、芸人25人がチームを作ってコントで競い合うネタ番組「ドラフトコント2022」で
女性芸人が1人しかキャスティングされなかったことなど、象徴的だと思うんですけど。

芸人の男女比が、24:1だったコント番組

能町 実は昨年も同じ番組が放送されていて、その時は女性芸人が5人いたんです。それが1人に減っちゃって「エーッ」って。

 コントだから別に何の制限もないし、どうせ男性芸人に女装させて女役をやらせるんだろうし、なぜもっと女性芸人を出さないのか。
そもそも、24:1ってありえない、と思ってツイートしたら、「実力順に選んだんじゃないですか」ってリプライが来たりして……。
実力の1位から順に選んでキャスティングしてるなんて本気で思ってるんですかね。

西澤 能町さんのツイートへの反響を見て、この指摘に対して、こんなに反発する人がいるんだ、とびっくりしました。

 作り手側も、悪意を持ってあのキャスティングをしたというよりは、男女半々の世界をイメージできてないんだと思うんですよね。
お笑いやテレビの世界にかかわっていると、男いっぱいに女1人か、女いっぱいに男1人とかは想像できても、
男女半々の経験があまりなくて、想像ができない。

能町 特にここ15年くらいのバラエティは、「アメトーーク!」(テレビ朝日系)的な感じで、
たくさんの男性芸人がチームプレーする内容が本当に増えたので、それがベースになっているんでしょうね。
芸人ではないきれいどころ担当の女性を1人連れてきて、あとは全員男性、女性はいても1人。そして、観客はほとんど女性という。

西澤 音楽番組も観客は女性が多いですもんね。観客は女性、審査員は男性という構図が落ち着くのか。

「アメトーーク!」の負の遺産

能町 以前、「アメトーーク!」プロデューサーの加地(倫三)さんが「男の客ばかりだと歓声が野太くなったり、笑わなかったりするから、
観客はほぼ女性にしている」と対談で話しているのを読んだことがあるんです。
それは確かにそうなんでしょうけど、その形が固定化してるのはマズいと思うんですよ。

 このことによって、演者側には男性が多いのが当然だとか、観客に反応のいい女性が多いから男性演者の喋りが盛り上がる、
みたいなフォーマットまで自然と固定化してるんじゃないかと思うんです。もうそのフォーマットをベースにして番組をやらないでよって思っちゃう。

西澤 そういう、「アメトーーク!」の罪ってありますよね。よく思うのが、「アメトーーク!」のひな壇に私と同世代くらいの男性芸人がバーッと並んだとき、
そこの関係性に属していない女性だったり、若手の男性だったりが入ると、なんかちょっと変な空気になる。

能町 そう。変な間が生まれたりしますよね。「村に知らんやつが入ってきた」みたいな。たぶん悪気はなくて、素でああなっちゃう。

西澤 だから、関係性の笑いの罪だとか、そこにずっと依拠してやってきた負の遺産はあるなと思いました。
でも、そろそろそこから抜け出して新しい形を見つけないと、世間の空気と合わなくなってきてしまう。

https://bunshun.jp/articles/-/59376