抜け脱した先にあったのがだるまと同じ境地ってつらいな

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幸不幸は表裏一体であった。
ずっと辛くて、ずっと死にたい人生だった。
だからこそ逆説的に、痛みと絶望でがしゃがしゃに脳を揺さぶられて、死んでいる暇がなかった。
専業YouTuberの4年間で、僕は失われたモノを次々に取り返し、それどころか得る事の喜びを知っていった。
10年ぶりに幼なじみや親友と再会し、ぎりぎりだが自活を継続し、請求書の出し方に領収書の収納術を学び、トラウマだった東京の地にも足を運び、好きになってくれる子との恋愛も楽しみ、AbemaTVへゲスト出演し、紙の雑誌に文章を掲載でき、ヘリコプターで大都会の景色を眺め、GUCCIのリュックをプレゼントして貰い、回らないお寿司を初めて食べ――
ぐちゃぐちゃだった過去を補修工事するように、楽しい事、笑える事、温かい気持ちになる事、心からありがとうと思える事を、通常ではありえない速度で経験していった。
そして、ふっと気付いたときに、この世界の解像度がぐんと上がっていた。
日本人の平均的な暮らし、恋愛結婚子育て、学歴職歴資格、年収の中央値、将来性、資産、投資……。
今までモザイク掛かっていた現実が、がぁぁぁ~~っと叫ぶようにリアリティを増し、ありのままの姿で襲い掛かってきた。
本当の不幸せは、幸せを知ってからが始まりなんだな。

壊れた生き方によって彩る世界観と、ちょこちょこと運ばれてくる刹那的快楽の中、今まで目を背けていた痛みが巨大化し、心が悲鳴を上げるようになった。

「弱者にとって悪夢はセーフティーネットなんだな。躁も鬱も、社会不安も、劣等コンプレックスも、イジメのトラウマも、親や社会への復讐心も、一切のパニック症状も……それらは、自分をかばってくれる働きだったのか? 鬱は敵だったんじゃねぇのかよ。味方の可能性すらあんのか? あの時、崩壊していたと思っていた心は、むしろ僕を守ろうとしてくれていたのか? 精神と現実の戦い? 病みが飛び交う防衛戦? 苦しいだけの悪夢だと思っていた。そこから目覚めた瞬間、本当の現実が心にざっくりと刺さり、本物の痛みがびちゃーっと広がった」