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京急「黄色い車両大集合」、レア企画連発の背景 貸し切り仕様「新造車両」がツアーの幅広げる

「赤い電車」がトレードマークの京浜急行電鉄が9月に開催したファン向けツアーの撮影会では同社の「黄色い電車」が勢ぞろいした。会場となった神奈川県横須賀市の久里浜工場へ参加者を運ぶ役目を担うのは、前年にデビューした新造車両だ。
■黄色の車両が大集合

 京急グループの京急アドエンタープライズは9月24日、品川発の貸し切り列車で久里浜工場に入線し、普段見る機会が少ない黄色い車体に赤帯が入った事業用車両を撮影するツアーを実施した。料金は1人1万8000円の設定だったが、募集開始から4分で定員90人が埋まった。

 企画の名称は「デト大集合『デトフェス!!』」。「デト」は資材運搬用の電動貨車で、「デ」は電動車、「ト」はトラックのトで無がい車を意味する。京急にはデト11・12号、デト15・16号、デト17・18号の3本が在籍する。これらのデトを一堂に集め、縦に「3重連」にしたり、横並びにしたりすることで希少価値を高めた。

 京急の黄色の車両としては、新1000形8両編成「イエローハッピートレイン」も存在する。京急はウェブサイトで、デトを「限られた区間でしか運転されず、赤い電車が中心の京急線において黄色い車両は非常に目立ち、絶対に乗車できないため、珍しい車両として『しあわせの黄色い電車』と呼ばれています」と紹介。「その人気に応え、“沿線にも幸せを広めたい”との思いから」2014年にイエローハッピートレインの運行を開始したと説明している。撮影会当日はこの通勤車両も登場、黄色づくしの異例の光景を参加者たちはさまざまな角度からカメラに収めていた。

 デト11・12は横浜市神奈川区の新町検車区に所属していて、不定期回送列車で出番は少ないが資材の運搬に神奈川新町―久里浜工場間を走る場面を見ることがある。

 一方、デト15・16は久里浜工場隣接の車両管理区、デト17・18は新町検車区にあって異常時に駆け付ける救援車なので、事故復旧訓練以外で見る機会はないに越したことはない。「救援機材」と表示された荷台のコンテナには、ジャッキをはじめ脱線車両を線路に戻す際に使う器具などが収められている。横浜市金沢区の金沢検車区にはデトでなく救援用の軌陸トラックが配備されている。
京急電鉄の広報担当者によると、デト11・12は導入当初、軌道工事の砕石運搬車としても使用された。「デト15・16とデト17・18はそれぞれデチ15・16とデチ17・18として定尺レールや枕木などを運搬する目的で、ホイストクレーンがついた車両として誕生しました。そのためデト11・12より荷台が広くなっています」という。

 いずれも廃車となった旧1000形車両が活用された。その後、デチはレールや枕木を運搬する専用車両が入ったことで使用用途を変更、デトに改造されたという。救援車としては、かつてはクト1とクト2という700形や旧1000形に連結して走行する動力を持たない車両も存在した。

■レア企画を担う新造車両

 現在こうした「レア企画」を含め、貸し切り列車の運行を担っているのが、2021年にデビューした新造車両「新1000形1890番台」だ。同社で初めて、窓を背にしたロングシートと進行方向を向いたクロスシートのどちらにも転換できる座席を採用したのが特徴だ。

 車内へのトイレの設置も同社初となる。バリアフリー対応の洋式と男性用の両方を設けた。さらに全席に電源コンセントを備えた。通常の営業列車のほか、通勤・帰宅時間帯の「座席指定ウィングサービス」、休日の貸し切りイベント列車と、幅広く運用することを開発段階から想定した。

 車両の細部にもこだわりをみせている。運転室越しに前面の景色が楽しめる「展望席」とその側面の細長い窓、ステンレス製の車体ながら溶接痕を目立たなくして、京急の伝統カラーである赤とクリームホワイトの塗装を施した。4両編成を5本導入しており、京急ユーザーにとっても日常利用で乗車する機会は多い。

 2022年5月には鉄道友の会が前年に営業運転を開始した車両から最優秀を選ぶ「ブルーリボン賞」を受賞した。同会は選定理由を「チャレンジングな姿勢と堅実性を兼ねそろえたトータルバランスに優れた車両であり、多くの会員の支持を集めた」と説明する。