https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuratoshikazu/20230103-00331234

二日酔いで頭痛、なぜ起きる? 軽くする方法を脳外科医が解説

普段よりお酒の量が増える時期です。
「昨日は楽しい酒だったのに…」と後悔する二日酔い。
少し古い統計ですが、アルコールを飲む人の75%(4人中3人)が、二日酔いを経験したことがあるとされており、多くの方が「そうだよね」と共感できるのではないでしょうか(1)。
しかしながら、症状には意外と個人差があるようです。
よくある症状としては頭痛、吐き気、食欲低下、だるさの他、下痢や寒気を感じる方もいます。
飲酒運転は認知能力などに影響し、事故のリスクが高くなるため、刑事罰の対象となりますが、二日酔いについても判断や空間認識能力に影響を与えることが知られています。
つまり、実際には仕事のパフォーマンスに影響するようです。
(外科医が二日酔いで手術していたら嫌ですよね。)
この二日酔い、どうして起こるのでしょうか?
また、二日酔いにならないように楽しくお酒を楽しむ方法は無いのでしょうか?
二日酔いの原因
愛飲家もよく知っていることだと思いますが、アルコール(エタノール)は、身体にとっては毒です。
実際に、高濃度のエタノールは蛋白を変性させ、細胞を殺す効果があるため、脳外科の手術でも使うことがあります。
胃や腸で身体に吸収されたアルコールは、血液に運ばれて全身を巡りますが、主に肝臓で分解されます。
具体的には、アルコールは肝臓の酵素のはたらきで、有毒なアセトアルデヒドを経て、酢酸(お酢の成分)に分解されるわけです。
余談ですが、「日本人は欧米人と比べて、アルコールを分解する酵素が少ない人が多い」と聞いたことがあるかもしれませんが、実際にはこのアセトアルデヒドを分解する酵素の活性が弱い人が多いということです。飲酒するとすぐに顔が赤くなる方は、無理して飲まないようにしましょう(2)。
たくさんアルコールを飲んだあとは、身体の中のアセトアルデヒドの量も増えますが、これが頭痛などの悪酔いに繋がるとされています。
しかしながら、二日酔いの原因は、身体の中に残っているアセトアルデヒドだけではなく、様々な要因が絡んでいます。
ここでは、考えられているメカニズムのいくつかを見てみましょう。
過剰な免疫反応
二日酔いになっているとき、血液中や唾液に、サイトカインという炎症が起こるときにはたらく免疫物質がたくさん出てきています。
風邪を引いたときにもサイトカインが上昇しますが、たしかに二日酔いは頭痛や胃腸症状など、風邪の症状に似ているとも言えます(3)。
また、炎症を抑える物質によって二日酔いの症状が緩和されるという研究もあります(後述)。
ホルモンの影響
また、飲酒によってホルモンの分泌が影響を受けることが分かっています。
アルコールを飲んでいる時に、おしっこが近くなることがあると思いますが、これは抗利尿ホルモンというホルモンの分泌が減るためです。
そもそも生物にとって水は貴重な資源です。
そのため、身体はできるだけ貴重な水を失わないようにできており、抗利尿ホルモンは腎臓で水分を吸収させ、身体から水分を失わせないようにしています。
アルコールはこのホルモンの作用を抑えてしまうため、おしっこの量が増えます。
しかし、その後、抗利尿ホルモンの効果が戻ってくると、一転して身体に水分が溜まる方向に働きます(4)。
二日酔いで身体がむくんでいるように感じるのは、このためでしょう。
この余計な水分が、頭痛などの原因になるわけです。
睡眠の障害
アルコールは睡眠にも影響します。
飲酒するといびきをかく方もいますが、いびきの有無にかかわらず、アルコールの量が増えると睡眠の質が低下します。
睡眠は、単に筋肉を休めて疲れを取るだけではありません。
脳に蓄積された不要な情報を整理したり、あるいは脳に老廃物が蓄積しないように掃除したりするはたらきが、睡眠中に起こることが知られています。
睡眠の質が下がると、これらの脳に備わったはたらきが低下するため、実際には睡眠不足、あるいは徹夜したような疲労が残ることになります。
つまり頭痛や、いまいちアタマが働かない感じに繋がるのです。
お酒側の要因
これらの飲む人の身体側の反応のほかに、お酒側に原因があるとも言われています。
お酒は、単に水とエタノールだけでできている訳ではありません。
アルコール度数のほか、原材料やその産地、蒸留しているかどうかなどによって、お酒の香りや味わいは違いますよね。
これらは、それぞれのお酒に性格を持たせますが、エタノールからすると不純物ということになります。