「中国に帰ります」。昨年11月、関西の建設会社で技能実習生として働く中国人男性から、受け入れ機関にSNSで連絡があった。担当者が寮に駆けつけて話を聞くと「日本にいる意味がない」とこぼしたという。

 月の手取りは15万~16万円。応募したのはコロナ前で、当時は1元15円台。月1万元は稼げる計算だったが、コロナ禍で来日が遅れる間に円安が進み、約7500元に目減りした。中国でも同じくらい稼げ、しかも通常は食事付きだ。

 男性の帰国が決まると、今度はペアで働いていた中国人技能実習生が失踪した。「不法就労でも1日で1万2千円もらえるスクラップ工場で働く」と、周囲に話していたという。

一方、6年前から大阪府枚方市の建設会社「正栄工業」で働くベトナム人技能実習生のドァン・ティ・トゥイ・ハンさん(25)は、「別の国で働くことも頭をよぎったけど、日本にはお金だけじゃない良さがある」と話す。

 高校生のころからアニメの「名探偵コナン」や「ドラえもん」が好きで、日本に行くのが夢だった。「日本語を勉強しながら、家族の生活を楽にしたい」。それが日本に来た理由だ。

月給約15万円のうち約10万円を、ベトナムの家族に送金してきた。50代の両親は農業などで生計を立てているという。ハンさんからの仕送りは、野菜の種や鶏のエサの購入にあてているそうだ。

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