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天国の母から13通目の手紙…「天使みたいに可愛かった梨菜も、もう18歳なんてね」

5歳で母親を亡くし、松山市のファミリーホームで暮らす高校3年生の梨菜さん(18)の元に、今年の18歳の誕生日にも「天国のお母さん」から手紙が届いた。梨菜さんはこれまで自身の境遇をあまり周囲に語ってこなかったが、母親が生前に書いていた手紙が毎年届くエピソードが9月に読売新聞で紹介されると、多くの人から温かい声をかけられた。「優しい人に囲まれ、私は元気だよ」。梨菜さんは空に向かって語りかける
18歳の誕生日を祝う母親からの手紙を読んでほほえむ梨菜さん(松山市で)
 梨菜さんの母親の順子さんは子宮 頸けい がんを患って2009年6月に34歳で亡くなった。生前、未成年後見人となる佐藤功行弁護士(兵庫県弁護士会)に梨菜さんが20歳になるまでの15通の手紙を託し、誕生日に毎年届けられてきた。
梨菜さんは、様々な理由で親元で暮らせない子どもたちを受け入れる松山市のファミリーホームで生活している。今月の18歳の誕生日も、佐藤弁護士が手紙を持ってホームを訪れた。

 天使みたいに 可愛かわい かった梨菜も、もう18歳なんてね。梨菜が元気でいてくれる、しあわせでいてくれる事がお母さんにとっても一番のしあわせ。

 順子さんからの手紙は、年を重ねるごとに漢字が増え、文章も長くなっていた。今年は、病気に苦しみながらも、幸せだったことを伝える内容だった。
病気になった時、本当に 沢山たくさん の人が私を支え勇気づけてくれて、人の心のあたたかさやありがたさに気づきました。そして、かなしさや病気さえも産まれて来る事が出来たという大きな幸せの中にあるんだと気づきました。


 梨菜さんは「かわいそうと思われたくない」と、これまで自身の境遇を積極的には話していなかった。しかし、ホームの取材に訪れた記者に「優しいお母さんのことを知ってほしい」と思い切って打ち明けた。

 9月に本紙で記事になると、同級生が「何も知らなかった。いつも笑顔の梨菜を尊敬する」と泣いてくれた。ホームや佐藤弁護士の元にも「力になりたい」「私も前向きに生きようと思えた」など全国から多くのメッセージが寄せられた。

 梨菜さんは「以前は周りの目が怖かったけど、記事に反響をもらい、温かい人が多いと感じた。『人と違っていい』と思えるようになった」と語る。

 そして、順子さんの今年の手紙に書かれた「沢山の人に勇気づけられ、人の心のあたたかさに気づけた」という言葉が改めて心にしみる。「私も、ホームのおじちゃんやおばちゃん、弁護士さんやたくさんの人に支えられてきた。つらいこともあったけど、今は幸せだと思える」と笑顔で話す。

 梨菜さんは児童福祉司を目指し、来春大学に進学する。20歳になったら順子さんに返事を書くつもりだ。伝えたいことはいっぱいある。でも、これだけは絶対に書こうと思っている。

 「私はいつも笑顔でいるから、ずっと空から見守っててね」