安倍晋三元首相の銃撃事件は、恐怖を植え付けることで政治的目的を達成しようとする従来のテロリズムの定義には当てはまらないが、暴力によって社会を変え、政治的にも大きな影響を与えたという意味では現代的なテロの概念にあてはまる。容疑者にその意図がなかったとしても、結果的に民主主義に対する挑戦となった。

報道されている容疑者の供述の通りであれば、母親が総額約1億円を献金した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への私的な怨恨(えんこん)を募らせ、教団とつながりがあると考えた安倍元首相を狙ったとされる。

知名度も影響力もある政治家が、選挙の街頭演説中、公衆の面前で一市民に殺害される。容疑者はそのインパクトの大きさを自覚していたとみられる。容疑者の主張は世間に広がり、旧統一教会にダメージを与えることにも成功している。結果的にテロの意図が達成されたこと自体が民主主義の危機といえる。

https://www.sankei.com/article/20230107-4R2NF6N5HVJUJNESWSFBNKLPQQ/