ヘンリー王子の25人殺害「チェスの駒」表現に英国内外で波紋

英国のヘンリー王子がアフガニスタンで軍務中、イスラム主義組織タリバンの戦闘員を「人間ではなくチェスの駒」と思って殺害したと告白したことについて、国内外で波紋が広がっている。現在アフガンで政権を掌握するタリバンの幹部は強く反発し、英軍関係者からも「敵の報復を招きかねない」と懸念の声が上がっている。

英メディアによると、王子は10日発売予定の自伝「スペア」の中で、タリバン兵を人間と思わず、「チェスの駒」を盤上から消す感覚で排除したと振り返った。殺害したのは計25人だったことも明らかにした。

これに対し、タリバン内の強硬派で、米国がテロ組織に指定する「ハッカーニ・ネットワーク」のアナス・ハッカーニ幹部は6日、ツイッターで王子を非難。「あなたが殺したのは駒ではなく人間だ。彼らの帰りを待っていた家族がいたのだ」と投稿した。タリバンの別の幹部も同様に王子を批判する声明を出した。

英国内でも王子の告白は軽率だったとの批判が起きている。2003年にアフガンで英軍を指揮した退役軍人のリチャード・ケンプ氏は英メディアに、敵兵を人間以下のチェスの駒に例えたのは「危険だ」と指摘し、「タリバン支持者らの復讐(ふくしゅう)心をあおり、英軍や王子自身の安全を脅かす」可能性があると述べた。

英王室の男子は軍務に就く伝統があり、ヘンリー王子は07~08年と12~13年の2回にわたってアフガンに派遣され、当時は反政府勢力だったタリバンの掃討作戦などに従事。攻撃ヘリコプター「アパッチ」の操縦士も務めた。英王室との確執が続く王子は20年に公務を離脱し、現在は米国に住んでいる。タリバンは21年にアフガンで政権を掌握した。【ロンドン篠田航一】
https://mainichi.jp/articles/20230108/k00/00m/030/020000c