生きたまま皮膚と肉を削がれて息絶えた…最古の女性科学者が残酷な死を遂げた理由

その絵画に描かれた、豊かに波打つ長い金髪で裸体を隠し、必死に何かを訴える女性は、はるか1600年の昔、エジプトのアレクサンドリアに実在した数学者にして天文学者、哲学者にして教育者でもあったヒュパティアだ。

(略)

だがヒュパティアは改宗しなかった。ギリシャ系の彼女は多神教徒であり、且(か)つまたキリスト教の教える「奇蹟」を否定し、あくまで学問は科学的であるべしとの信念を曲げなかった。アレクサンドリアの知識層を代表し、がらんどうになった図書館でなお研究を続ける彼女のこうした態度はキリスト教過激派の憎しみの的となり、415年、ついに惨劇が起こる。

ギボンの『ローマ帝国衰亡史』によれば、ヒュパティアの最期(さいご)はこうだったという――「魔女」と見なされた彼女は総司教キュリロスたちに拉致され、教会へ連れ込まれ、裸にされた後、牡蠣(かき)の貝殻で生きたまま皮膚と肉を削(そ)がれて息絶えた。遺体はその後ばらばらにされ、見世物にされてから、市門の外で焼かれた。

教会堂の中でなぜヒュパティアが裸なのか、なぜ悲痛な表情なのか、なぜ床に着衣が散乱し、大きな燭台の一部が倒壊しているかがわかるだろう。彼女はこれから自分にふりかかることを予期し、恐怖を抑えるかのように胸のところで右手を強く握りしめる。

その一方で左腕を天へ向かって伸ばし、暴徒らに理性を訴えている。アレクサンドリアという都市の成り立ちと学問の自由も思い出させようとしているのかもしれない。

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