何百年も前の「異端審問」が学歴レベルや人間関係の「信頼できなさ」の原因となっている



 シドニー大学のJordi Vidal-Robert氏らがスペイン異端審問に関して新たに行った研究は、スペイン異端審問がかつて苛烈だった地域の現況を調べるというもの。Vidal-Robert氏らは記録に残されている計6万7521件の異端審問から算出される地域ごとの「異端審問強度」と、地域ごとの経済・文化水準を比較しました。

 Vidal-Robert氏らの比較の結果、異端審問が一切行われた記録がない市町村と、異端審問強度が下位3分の1だった市町村は現代において1人あたりGDPが最も高く、異端審問強度が中位3分の1にあたる市町村は所得が著しく低く、異端審問強度が上位3分の1にあたる市町村は経済活動の水準が著しく低いことがわかりました。異端審問がゼロだった市町村では1人あたりGDPの中央値は1万9450ユーロ(約255万円)となりましたが、異端審問強度が最も高い市町村では1万8000ユーロ(約236万円)を割り込んでいたとのこと。

 また、教育や人々の間の信頼感についても同様の結果となりました。教育については異端審問がゼロだった市町村と異端審問が中程度あった市町村を比較すると、後者は高等教育を受けている人口が5.6%低下しました。信頼感については「一般論として人間は信頼に値すると思いますか?それとも用心するに越したことはないと思いますか?」という質問で示される人間に対する信頼度が、異端審問が苛烈だった地域ほど低下するとのこと。また、宗教に関しては異端審問が苛烈だった地域ほど、今日でも教会への出席率が高いという結果が得られたそうです。
https://gigazine.net/news/20220110-spanish-inquisition-still-linger/