中国軍機の台湾上空接近が倍増、米国の「対中牽制」にまったく効果がない理由
見透かされている“アリバイ作り”的ポーズ

台湾側空域への侵入が急増

 閑話休題、バイデン政権が台湾問題に関する対中強硬姿勢を強化するのに呼応して、中国は台湾に対する軍事的威圧をますます強化している。とりわけ目に見える形で威嚇する台湾上空への中国軍機の接近は、米側の台湾支援強化ポーズに比例するように急増している。

 昨年(2022年)、バイデン政権はアメリカ海軍艦艇による台湾海峡通航、すなわち中国に対する軍事的牽制を9回実施させた。このような米側の“牽制”に対して、中国側は口では「軍事的威嚇は平和を乱す行為である」と非難してはいるものの、少しも“威嚇”とは感じていないため、台湾海峡周辺上空への軍用機(戦闘機、爆撃機ならびに偵察機)飛行回数を劇的に増強させている。

 台湾の防空識別圏(ADIZ)内への侵入飛行を確認された中国軍機は、2021年にはのべ972機であった。それが、バイデン政権による中国に対する軍事的牽制がより一層強化された2022年には、のべ1737機と2倍近くに増加した。

このうち戦闘機は、2021年にはのべ531機であったのが、2022年にはのべ1197機へと倍増し、長射程ミサイルや核爆弾をも搭載可能なミサイル爆撃機はのべ60機からのべ101機へと増加した。

 また、中国軍機が台湾防空識別圏に侵入し台湾上空へ接近した日数は、2021年の240日から2022年には268日へとおよそ1カ月分増加した。

 台湾海峡の中国側と台湾側との中間地点を便宜的に結んだ中間線は、台湾は中国の一部であると主張している中国側にとっては、国境線としての意味合いは持ってはいない。それにもかかわらず、中国軍機が台湾海峡中間線を越えて台湾側空域に侵入することは極めて稀であった。たとえば、2022年8月2~3日にナンシー・ペロシ米連邦下院議長が台湾を訪問したが、それ以前の2022年中に中国軍機が中間線を越えたのはわずか1回であった。ところがペロシ訪問後2022年12月31日までの期間に中間線を越えた中国軍機はのべ564機を数えた。

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