子ども1人あたり3000万円の嘘


「子ども1人育てるのに3000万円かかる」なる説を見聞きしたことがある方は多いだろう。学資保険の営業に精を出したい保険会社が流布しているのかどうかは知らないが、私はこの手の言説に強い疑問を感じる。

 なにしろ3000万円は必要最低限の額ではない。教育費をかけているお金に余裕のある家庭のお子様が大学卒業までにかかる費用を積み上げているものだ。それでいて、親であれば受け取れるお金については触れずに「子どもをつくれば大金がかかる」という悲観的刷り込みばかりが広まっている。

 これでは「子育ては経済的に余裕のある人たちの特権」と多くの人が誤解し、少子化に拍車がかかるに決まっている。私は3人の子を持つ親として、子どもを産んでもそこまで金はかからない、と声を大にして言いたい。むしろ、やりようによっては子どもを産むことで家庭に幸せが訪れるうえに、経済的メリットを得ることもできるのだ。

 順を追って説明していきたい。まず子どもの誕生からだ。子どもの出産費用は健康保険制度の適用外のため、全額自己負担となる。その額40万~50万円程度。やっぱりまとまった金額が必要と言うことなかれ。うち42万円が出産育児一時金として給付される。

 地方では割高な病院を選ばなければプラスになる。都心部では高額な傾向があり数万円程度マイナスになるが、割安な病院を選択することで持ち出しをほぼゼロにすることは不可能ではない。里帰り出産や隣県の病院を選択するのも手だ。

 また、東京都では現在、出産支援事業として出産すると10万円のクーポンを配っている。国も2023年4月から給付額が50万円に増額される予定なので、より利益が出しやすくなるだろう。浮いた分は申請すれば受け取ることができる。

 当然、仕事をしている女性なら産休・育休手当は受け取れる上、社会保険料の免除も馬鹿にできない。我が家では、妻がその間にフリマサイトやオンラインの副業をしてせっせと小遣いを稼いでいた(基準以上の収入は手当が支給されなくなるのでご注意を)。


手当てのほかにも減額や免除、控除を受けられる



 子どもができればもらえるのが児童手当だ。その額、毎月1万5000円(2歳まで)。子ども1人あたり年間18万円にもなる。3歳以降も中学卒業まで毎月1万円ゲットできるので、1人あたり計200万円近い額となる。年間の所得制限額である660万円を超えると給付額は減るが、そんなに稼ぐ予定はない。なぜなら、第3子は割増があるので我が家の場合、総額650万円ほどもらえる予定だからだ。さらに東京都では子ども1人あたり毎月5000円給付する方針が示されている。そのほかにも1人あたり10万円もらえた定額給付金も、もちろん子どもも対象であった。

 とはいえ、子どもがいれば様々な出費があると心配するかもしれない。例えば保育園や幼稚園だが、2019年10月から始まった幼保無償化制度により、3~5歳は無料だ(幼稚園は月2万5700円まで無料)。我が家のような低所得家庭(住民税非課税世帯)であれば保育園は0歳時から無料だ。保育料がかかる世帯であっても、第2子は半額、第3子は無料などの減免措置がとられている自治体は多い。

 医療費に関しては自治体によって差はあるが、15歳までは無料の地域が多い。中には18歳や22歳まで無料の自治体まで存在する。当然だが、何度通院しても入院しても処方薬までも無料なのだ。逆に、小学校に入ると医療費が無料ではなくなる自治体も少数ながら存在する。そういった自治体で子育てをする場合は一定程度のコストが上乗せされることを意識して居住地を選択するべきだろう。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b508c4be67705c00336724e989826abe9f652883