受刑者は何を思うのか。
部屋を見せてくれたトミーさんは「ここに来られて本当に良かった。感謝している」。

父親も母親もいない。中学には通ったが、高校はやめた。14歳から犯罪を繰り返し、これまで10回以上刑務所に入ったという。今回は麻薬の密売や強盗などで4年半の判決。ハルデンで薬物中毒から脱するための治療を受けている。

さらに役立ったのは、自分の感情を話すプログラムを受講したことだった。「どんな問題を抱えているのか、自分で分かるようになったんだ。見てくれ」。人を失う悲しみついて書いた詩が壁に貼ってあった。「人生は短い。犯罪はもう嫌だ。今度こそやり直す」と力を込める。

クリスチャンさん(44)も薬物の密売や使用で何度も刑務所に入ったという。治療に加え、3年間勉強し、産業機械を扱う技師の免許を取った。

「学歴がなくて仕事もなかったけど、彼らが手伝ってくれた」と、傍らのスタッフに目を向けた。スウェーデンの刑務所にも入ったことがあるというクリスチャンさんは、「ここに文句はない。満足している」とまで言う。

「それでも社会に戻りたいですか?」と尋ねると、声を強めた。「家族や友達から引き離されているんだ。すごく家に帰りたい」。空白が多い履歴書で仕事を見つけられるのか不安はあるが、次こそはと誓い、残る日々を送る。

2人とも、ハルデンは2回目という。「環境さえ整えれば、人は変わる」というほど甘くない。ただ、何度犯罪を繰り返す人に対しても、やり直しを支えようという土壌があるのは間違いない。