信じ難いが、本当だ。「アップル」の共同創業者スティーブ・ウォズニアックは午前中、一度も携帯電話を見なかった。2度ほど、時間を確認するかのように手首を動かしはした。少し“カンニング”したのかもしれないが、それでも携帯電話そのものをポケットから出すことはなかった。

70年代末のギークで、世界初のパーソナルコンピュータを開発したとされ、スティーブ・ジョブズと仲違いするまでは親友で、かつてSFだった世界を日常にした技術革新の立役者の一人。その人物が、2時間あまり携帯電話を見ずに過ごしたのだ。

「ボトルから直接飲むよ」と言って水をオーダーしたウォズニアックは、物腰の柔らかな人物だ。

孤独で内気で、周囲に理解されにくい子供だったという彼は、人ごみが嫌いだ。大勢の人がいる場所は避けるという自らの習慣を、これまで一度だけ破ったことがある。それは、ミラノでコールドプレイのライブに行ったときだ。だが、彼はそれが気に入らなかった。

さらにウォズニアックは「フェイスブック」もやめた。あまりにもたくさんの見知らぬ“友達”のせいで息苦しくなったからだ。また、ツイートするのも頼まれたときだけだ。だが後ろめたい楽しみが一つだけある。それは「ティックトック」で毎晩1時間、動物を救う動画を探すことだという。

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