インタビュー:最先端半導体ラインに7兆円必要、政府と民間で=東・ラピダス会長

「日の丸半導体」復活に向け、日本の官民が連携して立ち上げたラピダス(東京都千代田区)の東哲郎会長は2日、ロイターのインタビューに応じ、2020年代後半にも目指す生産ライン立ち上げには7兆円程度の投資が必要になるとの見方を示した。3月にも試作ラインの建設予定地を決め、まずは春までに70─80人を採用する。

ラピダスは昨年11月、トヨタ自動車やソニーグループなど日本企業8社が共同出資で設立した。旗振り役の経済産業省が700億円を支援する。提携した米IBMと共同で加工線幅2ナノメートルの微細な最先端ロジック半導体を開発し、2020年代後半に日本国内の試作ラインで生産を始める。

東会長は「最先端の製造装置の確保などを含め2027─28年までに7兆円程度の投資は必要」と語った。政府の支援と民間出資などを組み合わせて実現していく。

試作ラインの建設候補地は明らかにしなかったが、人材の取り合いが発生しないよう、すでに半導体産業が集積している場所は避けるとした。日本では主に東北や九州に集積しているほか、三重県や広島県、茨城県などにも工場がある。

1977年に半導体製造装置メーカー、東京エレクトロンに入社し、96年から同社社長を務めた東氏は、日本の半導体産業の盛衰を目の当たりにしてきた。

かつてはメモリーを中心に世界を席巻したが、米国との貿易摩擦や国内の家電産業の衰退とともに凋落。世界が線幅2ナノの領域に入る中、日本勢の生産技術は40ナノが最先端と立ち遅れている。

東氏は現状を「危機的」と表現する一方、「あらゆる産業がデジタル化するなかで、(日本で)半導体(産業の支援を)やらないと産業競争力がなくなるとの危機感が高まっている」とし、ラピダスの設立・立ち上げには「追い風」と語った。「ロシアによるウクライナ侵攻や、台湾有事の可能性などから、(政府は)半導体支援に強い意志を固めている」と述べた。

米国が1月末に日本、オランダと合意した対中半導体規制については、内容を知る立場にないとした。一方で、米中関係は現状維持、あるいは悪化する可能性があり、日本企業も対中規制は無視できないとの見方を示した。

その上で、日本勢も中国向けはこれまでも最先端品より2─3世代遅れた技術の装置を輸出するなどの措置を取ってきたと説明した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/00bf2bd6bb7ebef14524e9f552a1229a983cfdc1