ロシアによるウクライナ侵攻から間もなく1年。隣国ポーランドに逃れている避難民は現在も約180万人に及ぶ。女性と子どもが大半を占める中、昨年12月に取材で訪れた南部クラクフの避難所では、18歳の少年2人と出会った。
彼らは言葉少なに、「徴兵を逃れるために、国境を渡った」と語った。(クラクフで、加藤美喜、写真も)
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母子ら数十人が暮らすクラクフ市内の民間避難所。2段ベッドが二つ置かれた狭い一室に、オレク(18)と妹のアナ(12)、母(46)、オレクの友人ペトロ(18)=いずれも仮名=が暮らしていた。
一家はロシアの侵攻の数日後、西部テルノピリから国境を越えてクラクフにやってきた。オレクは当時17歳。「18歳になると兵士にならなければいけないから…」と語り、「父さんが決断した」と話した。
ウクライナでは、総動員令で18歳から60歳の男性は徴兵対象となり、出国が認められていない。領土防衛隊で故郷を守っている父親(50)が、オレクが17歳の間に家族でポーランドに行くよう決めたという。
ペトロは経緯を詳しく語らないが、同様の理由で17歳の時に出国し、現在はオレクたちと共に暮らす。
(中略)
避難民を取り巻く状況は厳しい。ポーランド政府は「自立」を求め、民間の寄付も激減し、多くの避難所は運営が火の車だ。母親は故郷ではネイルサロンを経営していた。クラクフでは飲食店で清掃と皿洗いをし、1日12時間のシフトを深夜までこなす。
妹アナは「学校で友達をつくるのは難しい」と打ち明け、「ペットのハムスターを連れてこられなかったのが寂しい」と残念がった。
同じ避難民の間でも、微妙な感情がうずまく。一家を知るウクライナ避難民の30代女性は、「息子の徴兵を逃れさせたい親の気持ちもわかるが、国の男たちは命を懸けて戦っている」といい、「とても複雑な気分だ」と話した。
ポルトガルに親戚がいるというオレクは、同国に渡ることも考えている。
しかし、今一番どんな支援が必要か聞くと、「ウクライナ軍に武器を提供してほしい」と即答し、こうつぶやいた。「戦争に勝てば、家に帰れるから」

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