ストーカー規制法ができるきっかけとなった埼玉県桶川市の女子大生殺害事件をめぐり、両親が警察の対応が不適切だったとして県を訴えた裁判の記録について裁判所が廃棄していたことがわかりました。
裁判所は「保存期間が満了したため」としています。

平成11年、桶川市で女子大生の猪野詩織さん(当時21)がストーカー行為の末に殺害された事件では、猪野さんの両親が「警察が適切に捜査していれば事件は防げた」として県に損害賠償を求める訴えを起こしていました。
1審と2審はいずれも被害者への嫌がらせについて十分捜査しなかったことなどの過失は認めましたが、殺害されたことについては、「危険が迫っていると認識するのは難しかった」と判断して警察の責任を認めず、その後、確定していました。
この裁判の記録について、さいたま地方裁判所が平成24年2月に廃棄していたことがわかりました。
廃棄した理由について「保存期間が満了したため」としています。
社会の注目を集めるなどした民事裁判の記録は「特別保存」として永久的に保存することができるとされています。
しかし、「特別保存」にするか判断しないまま、廃棄や放置されるケースが相次いだことから、3年前に東京地方裁判所が裁判を担当した部から申し出があった場合や、2紙以上の全国紙で判決が報道された場合は「特別保存」扱いとする新たな基準をもうけ、現在は、ほかの裁判所でもこれに準じた運用が行われています。

裁判の記録が廃棄されたことについて、猪野さんの父親の憲一さんは「この裁判の記録は国民にとっても世に知らしめていく財産だと思っています。後世のための資料として残しておくべきなのに連絡もなく廃棄していいのかと思います。日本の司法に対して疑問や怒りが湧いてきます」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/saitama/20230202/1100016017.html