角と枝角はどう違うのか?

 多くの人が角と枝角を混同しているが、両者には大きな違いがある。

 角は頭蓋骨の一部で、抜け落ちることはない。私たちの髪や爪と同じく、タンパク質ケラチンを主成分とする死んだ組織で、新しい素材が根元に追加され、毎年少しずつ大きくなっていく。ヒツジやヤギ、ウシなど多くの哺乳類に生えているほか、ヤクやオリックス、ダイカーのように角を持つメスがいる場合もある。

 死んだ組織である角とは対照的に、枝角は生命力あふれる組織で、成長中に触れると温かい。

「血管が張り巡らされた組織で、春先から夏の終わりごろまで急成長します」とカンター氏はメーン州からメールで回答してくれた。カンター氏は吹雪がやむのを待ち、ヘラジカの子どもを捕獲する予定だという。

 枝角は1年の大部分、ベルベットというけば立った皮膚に覆われている。ベルベットの下には静脈があり、成長中の骨にカルシウムやリンなどの栄養素を供給する。ベルベットが死んで剥がれ落ちると、立派な骨の枝角が現れる。

 枝角の形成は、哺乳類で最も急速に成長する組織としてギネス世界記録を持っている。枝角の形成は夏にピークを迎え、毎日2.5センチメートル近く成長する。

枝角は何のためにあるのか?

 多くの人が枝角は武器だと勘違いしているが、実際は主に生殖のための道具だ。

 メスを巡って争うとき、枝角が小さいオスは大きいオスに阻まれることがある。それだけではない。「メスも、立派な枝角を持つオスを健康だと判断し、交尾の相手として選ぶことがある」とカンター氏は説明する。

 枝角の大きさに差がないオス同士の場合のみ、互いに角を合わせ、ひねったり押したりすることで、どちらが優位に立つかを競う。また、オス同士が互いの脇腹や尻を枝角で突き、それが致命傷になったり、捕食者や風雨にかなわないほど弱ったりすることもある。

 そのため、このような決闘はめったにない。代償が大きすぎるのだ。
なぜ枝角を落とすのか?

 秋の繁殖期、つまり、発情期が終わると、オスのシカは枝角が不要になる。実際、頭の飾りが邪魔になることもある。

 毎年、野生生物管理者や生物学者のもとに、枝角が絡んでしまったシカの報告が寄せられる。このような不運に見舞われたオスは、けがや飢え、さらには、捕食者による襲撃でしばしば命を落とす。

 人のそばに暮らすシカやヘラジカなどの場合、枝角そのものが自身の脅威になることがある。シカやヘラジカが木の枝に引っ掛かったり、フェンスやごみ、さらには、クリスマスの飾りに絡まったりすることも少なくない。

 幸いにも、シカ科の場合、頭の飾りは完全に使い捨てだ。

 日が短くなると、オスの体内ではテストステロンの分泌が少なくなり、その結果、枝角の根元が脱灰される。

「そうすると、根元のグリップが緩くなり、跳びはねたり、頭を振ったり、ほかのオスとけんかしたりしたとき、枝角が落ちてしまうのです」とマギー氏は説明する。

「そして、その過程がまた始まります」

https://news.yahoo.co.jp/articles/0d8874ef097cc8eed6722a00afb2f2cd2bac1d64?page=2