「茂木氏は敵に回さず」 安倍元首相が評した自.民幹事長の総裁への道

議場に集まった与野党議員の多くが耳を疑った。

 「『すべての子どもの育ちを支える』という観点から、所得制限は撤廃するべきだ」

通常国会で岸田文雄首相(65)の施政方針演説に対する代表質問が始まった1月25日。自.民党ナンバー2の茂木敏充幹事長(67)は児童手当の所得制限撤廃を首相に迫った。

「チルドレン・ファースト」を掲げた旧民主党政権は、所得制限のない「子ども手当」を創設したが、自.民はこれを「バラマキ」と批判し、所得制限付きの児童手当を復活させた。茂木氏自身も所得制限を訴えてきたにもかかわらず、覆す発言に議場はどよめいた。

茂木氏の提案はこれだけにとどまらなかった。子どもが多い世帯ほど所得税負担が軽くなるフランスの税制「N分N乗方式」をあげ、「画期的だ」と評し、議論を促した。

だが、これに対する首相の答弁は淡泊だった。「次元の異なる少子化対策を実現したい」などと述べるだけ。質問することは事前に首相官邸に伝えていたが、政府でも議論を始めたばかりで、首相には踏み込めない事情があった。

結果、幹事長と首相の少子化対策に取り組む「熱量」の違いを浮き彫りにしてみせた格好となり、自.民幹部は茂木氏のことをいぶかしんだ。「どうなっているんだ」

茂木氏の真意を側近議員は「首相がフラフラしていて、いま一つ何も言い切れずにいるからケツをたたいた」と推察し、こう続けた。「少子化対策は、自身が首相になったときにも向き合わなければならない課題だ。力が入るし、世論の動きにも敏感になる」

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