子牛暴落 1頭1000円でも買い手なし…背景に“飼料代高騰” 酪農家「ダブルパンチ」

子牛の取引価格が異常事態です。わずか1000円でも、引き取り手が見つからないケースもあります。なぜ価格が暴落しているのでしょうか?

■暴落の背景に“飼料代の高騰”

 千葉県にある家畜市場。先週、生後80日以内の子牛を対象にした競りが行われていました。

 この日のホルスタインの雄1頭の平均価格は、およそ3万2000円。1年前と比べると、3分の1以下の値段です。

 さらに、中には最低価格の1000円でも買い手が見つからず、取り引きが成立しない場面もありました。買い手がつかなかった子牛は、飼い主の元に返されるか、食肉用に加工されます。

 こうした厳しい状況に、酪農家から委託されて子牛を売りに来た人は、次のように話します。

 家畜商兼酪農家・内山輝敏さん:「何とか売れました。でも、思った値段にはなっていないので。(酪農家に)支払いに行く時に、『きょうも安かったよ』って言うのが、なんかつらいですね」

 乳牛はお乳を搾れるようにするため、一定数の子牛を産ませます。乳牛になれない雄の子牛は、一般的に競りなどを通じて、肉牛として子牛を育てる畜産農家に売りに出されるのです。

 その子牛の価格の大幅な下落。背景にあるのが、飼料代の高騰です。

 千葉県家畜商協同組合・蜂谷良一理事長:「子牛を買っていって育てますよね。飼育農家(畜産農家)だって、配合飼料高いじゃないですか。餌(えさ)代が高いから、相場も下げて(子牛を)買わなきゃいけない」

■“約7000万円返済”酪農家が悲鳴

 一方、子牛の売却益が重要な収入源の一つだった酪農家は、大きな影響を受けています。千葉県の酪農家を取材しました。

 若月牧場・若月一成さん:「子牛の売り上げが極端に落ちてしまったのと、餌代が非常に上がってきたので、ダブルパンチになってる」

 国は2014年に起きたバター不足を受け、乳製品などの安定供給を維持するための補助金事業を展開しました。

 この牧場では、新しい牛舎を建設しました。さらに、ロボット搾乳機を導入して自動化するなど、それまでの3倍にあたる300頭規模に拡大したばかりでした。

 若月さん:「当初の計算では300頭くらいにすれば、生活もできるし、(借り入れの)返済もできるという計画のもとに、今回の事業は始まった」

 規模を拡大する際に多額の資金を借り入れたため、年間の返済予定額はおよそ7000万円に上ったといいます。

 若月さん:「全く(返済の)めどが立たないです、この状態では。乳価が上がらない限りは皆で首くくらないとならない。やめられる農家は幸せかもしれないです。うちは借金しちゃいましたから、やらざるを得ないですけど。あとは、日本の食を守るという点でもやめたくないです」

 しかし、コロナ禍で需要は急減。生乳の販売で利益が出にくい状態になっています。

■乳業メーカー「台湾・香港に輸出」

 こうした現状を少しでも変えようと、北海道の乳業メーカーは、数年前から日本の乳製品の海外輸出に力を入れています。

 北海道乳業 専務取締役・山田邦彦さん:「2018年から輸出をして、徐々に数量を伸ばしてる、販売量を増やしてるという状況でございます」

 気候の関係で生乳の生産が難しい台湾や香港などに、乳製品を輸出しています。

 山田さん:「日本は地理的にも近いこともあって。賞味期限が短いですけれども、フレッシュな新鮮な味の牛乳というのをお届けできる。輸出というのが(国内の)需給を改善する大きな解決策ではないと思うが、長期的な視点でやっていくことが大事ではないかと思います」
https://news.yahoo.co.jp/articles/80c4b95b49bc63b883fefaebc66f4c7179169add