フィンランド、「ロシアビジネス」大打撃 客足激減、遠のく「共存」―ウクライナ侵攻1年

北欧のフィンランドは、隣の大国ロシアの存在を警戒しつつ、ビジネス面では地の利を生かして国境を越えた活発な交流を続けてきた。しかし、ロシアのウクライナ侵攻が始まった後、そうした関係は途絶え、ロシア人観光客を当て込んだ「ロシアビジネス」は大打撃を受けている。侵攻1年を前にした2月上旬、フィンランドの国境の町を訪れるとどこも閑散とし、侵攻の影響が如実に表れていた。

◇「皇帝」モールは閉鎖
 フィンランドの首都ヘルシンキから東へ車で約2時間。ロシア国境に位置するバーリマーは、ヘルシンキからロシア第2の都市サンクトペテルブルクにつながる幹線道路が走る交通の要所だ。国境検問所の約300メートル手前を曲がると、雪景色の中に突如として豪華な装飾の建物が現れた。大型アウトレットモール「ツァーリ」。名称はロシア語で「皇帝」を意味する。
 ツァーリは国境を越えてやって来るロシア人客を当て込み2018年に開業。ロシアで人気の有名ブランドなど約60店舗が入り、当初は盛況だった。ところが20年、新型コロナウイルスの流行で3カ月休業。その後は営業を続けたものの、昨年からのウクライナ侵攻の影響で客足が激減し、同年10月に破産を申請した。店舗は次々と閉まり、年末には施設全体が閉鎖された。
 営業再開に備えて週に数日、点検作業に来るというミコ・トミネン施設管理部長の案内で中に入ると、まず目に入ったのが上部に王冠の付いた巨大な椅子。皇帝の椅子を模したオブジェだが、座る人はもちろんいない。真新しい店舗はどれも空っぽ。静まり返った様子はまるで「ゴーストタウン」のようだった。
 トミネン氏に再開の見通しを聞くと「戦争後か、もっと先か、全く分からない」。欧米による対ロ制裁の影響が響いているほか、フィンランド政府が観光目的のロシア人入国を禁じたため国境は事実上閉鎖。侵攻が終わってもすぐに物流や人的交流が通常に戻る可能性は低い。トミネン氏は「隣人同士としてうまく共存していくには時間がかかる」と表情を曇らせた。

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