https://toyokeizai.net/articles/-/654618

韓国で「同性愛者保護」への反対運動増えている訳
画期的な高裁判決でも差別禁止法案は停滞中

韓国の高等裁判所は2月21日、国民健康保険に対して同性カップルでも被扶養者として認めるよう命じた。この判決は歓迎すべき勝利と見なされているが、支持者は性的少数者の権利を保護するために韓国があとどれほど前進しなければならないかを浮き彫りにしたと語る。

韓国では性的少数者の社会的受容が進んでいるにもかかわらず、ゲイ、レズビアン、トランスジェンダーの人々に対する差別を防止するための法案が国会で阻止されているのだ。

キリスト教保守派が反対し続けている
この法案に反対している決定的な要因は、強力なキリスト教保守派のロビー活動である。保守派の国民の力党の政治家たちは、教会に通う人たちを重要な票田として頼りにしている。しかし、中道左派の民主党が政権を握っていたときでさえ、両党の議員たちはこの声高なグループの要求を受け入れていた。

野党第一党の議員で2021年の法案提出者である権仁淑氏は「この法案ほど激しく攻撃されたものはない」と述べた。

このような措置は、他のアジア諸国でも支持されている。タイでは、2015年にクィアの権利を保護する法律が施行された。台湾では、性的少数者に対する差別は約15年前から法律で禁止されている。対照的に韓国では、アメリカ大使がLGBTQの権利を支持すると発言した後、抗議者たちがアメリカ大使の家の前で同性愛嫌悪の看板を掲げている。

「反差別法」と呼ばれるこの法案は、韓国の一般市民の間で支持を得ている。ギャラップ社が最近行った調査では、韓国の成人の約57%がこの法案に賛成している。賛成派は、法案が通過しなかったのは、この国の法律がいかに時代にそぐわないかを示す一例であると見ている。
反対派は政治家の携帯電話にメールを殺到させた。教育委員会を説得して、図書館からトランスジェンダーのキャラクターが登場する本を撤去させた。全国の都市で、法案に反対するために公の場で祈った。そして、彼らの仲間は増え続けているという。

物理学教授で長老派のギル・ウォンピョン氏は、「同性愛と差別禁止法に対する反対運動が爆発的に広がっている」と話す。「この法律に反対する最初の団体は10年前に結成された。今では全国に数百の団体がある」。

淑明女子大学のホン・ソンス法学部教授は、「韓国があらゆる差別を公式に非難するかどうかが問題だ」と指摘する。

国民健康サービスは上告する方針
障害者、女性、高齢者の保護は確保されている。司法制度も、21日に発表された画期的な判決に見られるように、同性愛者の権利をある程度認めている。しかし、性的少数者の完全な保護を法律定めたものはない。現在の形の法案は、さまざまなグループの保護を強固にするものだが、国会で審議が滞っている主な理由は、保護される中にLGBTQの人々が含まれているからである。

「差別禁止法案は、差別の被害者が裁判で有利になる」と、21日の判決でカップルの代理人を務めた韓国で初めてトランスジェンダーであることを公言している弁護士、パク・ハンヒ氏は言う。国民健康保険サービスは、上告して最高裁に持ち込むことを検討するという。

25年前、ノーベル賞を受賞した金大中元大統領は、韓国の指導者として初めて反差別法案を支持した。その後を継いだ盧武鉉元大統領もこの法案を支持した。2007年以降、ほぼすべての議会でさまざまなバージョンの法案が提出されているが、効果はない。

現在、法案は国会の小委員会で審議されている。保守的な国民の力党が多数を占める限り、採決に至ることはないだろう。法案に反対している多くの教会員は、この法案が自分たちの伝統を脅かし、家族の完全性に疑問を投げかけ、子どもたちを堕落させかねないと主張している。