以下抜粋

中年童貞を作りだした90年代

竹村 「いい年して独身でも問題ない」という価値観が、中年童貞がまだ若かった90年代くらいの日本で
浸透したのも大きいんじゃないでしょうか。キリスト教文化圏だと、
「男女は対になる、つがいになるのが自然」という概念が隅々まで行き渡ってますけど、
日本にはそういう宗教的な精神性もなければ、祭りで男女が結ばれるような夜這いの習慣も廃れてしまった。
世間からの「大人たるもの、誰かとつきあわなければならない」というプレッシャーが弱いんじゃないでしょうか。

中村 そうかもしれません。「こうでなければいけない」という社会的圧力は、今の日本には確かにない。
ついでに言うと、良くも悪くも、いい年した大人の男がアイドルにハマる後ろめたさみたいなものもなくなってしまった。

竹村 童貞はみっともないから、こっそり風俗に行って頑張んなきゃみたいな空気もない。

中村 彼らが青年期を過ごした時期のアダルトビデオ業界も少し関係がありそうです。

田房 どういうことですか?

中村 ソフト・オン・デマンド(SOD)というアダルトメーカーが15年くらい前に「お客様第一主義」というものを取り入れたんです。
それまでのアダルトビデオ業界はいい加減なもので、たいして可愛くもない女優でも裸にさえなれば商売として成立していた。
SODはそれを全否定して、モテない男の言うことを全部聞きますという姿勢で商売をはじめて大成功したんです。
ユーザーからアンケートをとって、そのニーズを全部叶えた作品を作り続けたんですね。
中年童貞的な人たちの要求は“もっと可愛い子に、もっと激しいプレイをさせろ”とキリがない。
ユーザーレビューなんかみると、ひたすら文句言っていますよ。僕もアダルト業界に関わっていたけど、すぐについていけなくなった。

田房 メンタル童貞性に徹底的に従ったんだ。

メンタル童貞を育む現代社会

竹村 今は90年代よりも女の子が献身的になっていて、多くが「結婚して“もらわなきゃ”いけない」と下手(したて)に出ています。
かつては「女の子は威張って良し」みたいなムードがありましたけど、今やほとんどありません。

田房 ないです。全然ないです。

https://www.gentosha.jp/article/3111/