熱中症に「特別警戒アラート」新設へ…冷房施設をシェルター指定

猛暑で年々深刻化する熱中症の対策として、政府は、従来の熱中症警戒アラートより一段上の「熱中症特別警戒アラート」を新設する方針を固めた。発表時に自治体が冷房のある施設(クーリングシェルター)を住民に開放することが柱。2024年夏の運用開始を目指す。

熱中症警戒アラートは、環境省と気象庁が20年から運用している。気温や湿度、日差しの強さなどから「暑さ指数」を算出し、33以上と予測される日に、都道府県ごとに発表。冷房の使用やこまめな水分補給、外出の自粛などを呼び掛けている。昨夏は全国で延べ889回発表された。

近年、熱中症の搬送者は全国で年間4万~5万人と高水準で推移。死者も20年まで3年連続で1000人を超えた。しかし政府が自治体に対策を求める法的根拠はなく、今回初めて熱中症対策を気候変動適応法に明記する。今週にも改正法案を閣議決定し、今国会に提出する。

改正案では、市区町村に対し、冷房を備えた公民館や図書館などの公共施設、ショッピングセンターなどの商業施設をクーリングシェルターに指定するよう求める。極端な高温で健康に重大な危険が迫ると予測される場合、特別警戒アラートを発表し、市区町村がシェルターを開放して住民が利用できるようにする。

独自にシェルター整備を進める自治体はあるが、環境省が昨年実施したアンケートでは、回答した592市区町村のうち2割(125市区町村)にとどまる。

地球温暖化がもたらす異常気象により、夏の高温リスクはますます高まっている。気象庁によると、最高気温35度以上の猛暑日の年間日数は1993~2022年の年平均で2・7日。温暖化がこのまま進んだ場合、今世紀末は20世紀末より19・1日増加する。

政府はより深刻度の高い特別警戒アラートを新たに設け、自治体に積極的な対策を求めるとともに、国民に強く警戒を促したい考え。特別警戒アラートの具体的な発表基準やシェルターの条件などについて有識者による議論を始めており、改正案成立後に政省令で定めることにしている。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20230225-OYT1T50333/

https://www.yomiuri.co.jp/media/2023/02/20230225-OYT1I50178-1.jpg