4万6000人以上の死者(2月19日現在)を出す今世紀最大の震災がトルコ・シリア国境地帯で発生した。

アルジャジーラ・アラビア語チャンネルは震災発生直後より通常番組の枠を取り払い、約1週間にわたって被災の状況を現地から直接伝え続けた。

一方、筆者が耳を疑ったのは、6日午後の記者会見で松野博一官房長官が「日本人で被災した人は確認されていない」と述べたニュースだった。

◆その無神経さ

日本時間で同日の昼前に発生した地震が、数万人規模の犠牲者を出す大災害であることは、被災直後からSNS等を通じて流された建物倒壊の映像や緊急ニュースで容易に推測できた。

このような人道上の大災害を前にして、世界のリーダー、今年の先進7カ国(G7)サミット議長国のスポークスマンが「自国民は無事です」というメッセージを発するのか、と失望を通り越し、激しい怒りにとらわれた。

そうSNSでつぶやいたところ、ある方から次のようなエピソードを聞いた。

いわく、NHKの国際放送は航空事故があると「日本人乗客はいなかった」とのニュースを17カ国語で拡散する。その無神経さにアナウンサーたち(ほとんど全員外国出身)が抗議するが、いまだに改善されない、と。

なぜそんな非情な報道がまかり通るのかと調べたら、事情はすぐに分かった。

記者会見のすべては録画で首相官邸ホームページが提供している。官房長官は、NHK記者の「日本人に関する情報と支援を含めた今後の(政府)対応」という質問に対して誠実に答えたのであり、その一部分を私はニュースとして聞いたのだ。

◆さらに驚いたこと

つまり、それはメディア側が知ろうとし、メディアが選択して国民に伝えた内容だった。それは第一報として日本人が知りたい情報なのかもしれない。

しかし、何万人もの人が確実に生き埋めになっている大災害が発生している時に、真っ先に伝えなければならないことだったのだろうか。

会見の時点で、未曾有の大災害の発生は明らかであったのに、記者も政府側も、職業上の注意力と想像力が欠如していたのではないか、と思う。

官房長官は、トルコ災害緊急事態対策庁の発表した初報・死者76人に言及したが、「そのような規模の地震にとどまらないことは明らかであり、全力で救援に当たりたい」ぐらいのことは言うべきであった。

さらに驚いたことは、日本メディアがその後もこの地震報道を強化しなかったことだ。当日夜7時のNHKニュースは当然トップかとチャンネルを合わせたら、フィリピンからの特殊詐欺容疑者移送の件を長々とやったのにはあきれ果てた。

その後も、民放を含めて、わが国と海外の報道姿勢には温度差があった。被害者の目線で、どれほど救援が待たれているかを訴える海外メディアに対し、わが国は死者数の積み上がりをひとごとのように読み上げる冷たい報道が目立った。

https://news.yahoo.co.jp/articles/f0a2ba7990e47df5a19f3f24792dc94704194f78