■ヨレヨレのTシャツ投げつけ「はよ交換しろや」
「おい、はよ交換しろや!」。広島県のアパレル店でアルバイトをする男子学生(23)は、客のけんまくに体がこわばった。

1月末、中高年の男性が商品の交換を求め、汚れたヨレヨレのTシャツをカウンターにバンっと投げつけた。未着用品でなければ返品に応じられないと丁寧に説明したが「着てない。交換しろ」の一点張り。押し問答すること15分。男性は威圧的ににらみつけ、その後も店に居座り続けた。https://img2.bakusai.com/m/imagebbs/_nosync/421/048/22304906/900.jpeg

「こんなことは日常茶飯事です」と、男子学生はため息をつく。バイト歴4年。コロナ禍の中で理不尽なクレームが増えた。長時間ネチネチ責めてくる客や一方的にキレる客…。主婦のパートより、学生バイトが標的になっている。「社会経験の少ない僕らには高圧的に言ってもいいと思っているみたいで。ストレスのはけ口なんですかね」。10代の後輩はショックでシフトに入れなくなった。

守ってくれない組織にも不信感が募る。社員に相談しても「客は選べない。慣れるしかない」「気にしないのが一番」と、対策を講じてもらえない。「こっちの身が持たない。『お客さまは神様』という文化、いつまで続くんでしょうか」https://news.yahoo.co.jp/articles/349939afc772797610c5632c8eedba38acc237ce

 身の危険を感じるカスハラもある。広島県福山市の女子学生(21)は、コンビニのバイト中、レジの前で小声で話す中年の男性客に聞き返すと突然、「いつものたばこ出せや!」と怒鳴られた。「毎日来てるのに覚えとらんのかクソが。使えねーな」と顔に小銭を投げつけられ、怖くてしばらく声が出なかった。「モノのように扱われているようで傷付きます」とうつむく。

 2020年に奈良女子大の安藤香織准教授のゼミ生だった川上菜摘さん(24)が接客バイトをしたことがある全国の大学生・大学院生に行ったネット調査では、150人のうち44・7%がカスハラを経験。そのうち76・1%が精神的な影響を受け、74・7%が「バイト先がカスハラ対策を行っていない」と回答した。

 就職活動に影響が出た人もいる。広島市の女子学生(22)はスーパーでバイトをしていた昨春、目当ての商品がないという50代の男性客から「謝れよブス。若い女は礼儀がなってねーな」。さらに「目つきが気に入らない」などと20分以上絡まれた。両替を断った客からレジの台を蹴られたこともある。中年の男性への苦手意識が消えず、第一志望の会社の面接で失敗した。「社会に出るのが怖い。これからやっていけるかな…」と不安を吐露する。