https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/92221.html

2024年度から1人1000円が徴収されることになる新しい税を知っていますか?
その名は「森林環境税」。
国内の森林整備などを目的に、住民税に上乗せされる形で納税者から直接徴収されます。
先行して別の財源から自治体に交付金が配分される制度が始まっていますが、その使いみちを取材すると、およそ半分が眠ったまま有効に使われていない実態がわかってきました。森林大国・日本で何が起きているのでしょうか。
(伊藤憲哉)

森林環境税とは
「森林環境税」は2015年にフランスで開かれたCOP21で採択された「パリ協定」の枠組みのもと、温室効果ガスの排出削減目標の達成や災害の防止などを達成するため、2019年に法律が成立しました。

2024年度からは国税として、国内に住所がある人から1人1000円、住民税に上乗せする形で「森林環境税」が徴収されます。納税者を約6200万人とすると、税収は1年で620億円に上るといわれています。その税収は全額が「森林環境譲与税」として全国すべての都道府県や市町村に配分されます。納税開始までは2019年度から、先行する形で国庫から交付金として配分が始まっています。

しかし、国のまとめによると、制度が始まった2019年度からの3年間で、全国の市町村に配分されたのは約840億円。その47%にあたる395億円が活用されていませんでした。

私有林や人工林の面積がゼロの東京・渋谷区では、昨年度までの3年間で4600万円あまりが交付されていますが、全額を基金として積み立てています。

担当するのは区役所の「財政課」。そもそも渋谷区には、林業や農業の担当係はありません。今後の使いみちを尋ねて返ってきたのは…。

(担当者)
「都市部なので、林業に対する考えが及んでないというか、よくわかりません。特定の事業に使う想定はありません」
今後、公共施設の新築やリニューアルの際に、木材を利用していきたいと思っているものの、具体的な予定はなく、今年度も全額積み立てる予定だということです。