2008年に赤字転落した電通、日本経済とテレビの将来に絶望して方針転換 「これからは官庁相手に公共事業の宣伝をしていく」 [452836546]
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2009/06/23 東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/articles/-/10492
農林水産省が昨年10月に立ち上げた食料自給率向上のキャンペーン「フード・アクション・ニッポン」。
5月12日には、推進パートナーの味の素と全国農業協同組合連合会(全農)が、国産農産物の消費拡大策として、大々的なテレビCMと食品スーパーの店頭プロモーションをスタートすると発表した。
「従来の農水省の活動なら、コメの単発PR広告止まり。
ここまで広がりのある活動になったのは初めて」と農水省食料自給率向上対策室の牛草哲朗室長は語る。フード・アクションではほかにも、実に1200社強の民間企業が集まり、運動名称のロゴやマークを使用して消費拡大策や啓蒙活動を展開。
今年に入っては不況下での雇用の受け皿としての関心も高まり、テレビや新聞、雑誌も続々と農業を特集し始めた。
「最近では、食料自給率向上運動は、農水省の省益拡大を狙った陰謀ではないかという論説が出てきた」。味の素と全農の発表の場に駆けつけた石破茂農水相は、こう言って会場の笑いを誘った。
実は、こうした社会の反響に手応えを感じているのが、ほかならぬ電通だ。
電通は、フード・アクションの事務局を農水省から受託。裏方として、民間企業を巻き込んだキャンペーンや情報発信を手掛けている。
最近の農業ブームの仕掛け人は電通と言えなくもない。
電通が得意とするテレビ、新聞、雑誌、ラジオの4大マス広告は、4~5年前から減少を続けている。「ネットなど新しいメディアの登場で、マス広告にとっては大変に厳しい状況を迎えている。今やマス広告というだけでは広告キャンペーンは成立しない」(電通の高嶋達佳社長)。
そこに追い打ちをかけたのが、リーマンショック以後の世界同時不況。前2008年度、電通の業績はスポンサーの大幅な広告費削減を受けて前期比23%減の営業減益に陥り、今09年度はさらに同63%減まで悪化する見込みだ。
純益に至っては、08年度は株評価損関連が加わり、実に106年ぶりの創業期以来の赤字転落となった。
ただ、より深刻なのは不況よりも高嶋社長の指摘する構造変化だ。将来景気が盛り返しても、企業はコストの高いテレビCM以外の手法を多用。かつてのように景気回復期にテレビCMに集中的に需要が戻ってくる可能性は低いとみられている。ここに電通の危機の本質がある。
「待っていてはダメ。こちらから仕掛けろ」--。かつてない逆境の中、電通は今、変身を遂げようと必死だ。そこで成果を上げつつあるのが、冒頭のフード・アクションを含む公共政策キャンペーン事業だ。
生物多様性(環境省)、オリンピックの東京招致活動(東京都)……。電通は次々と公共政策キャンペーンを手掛けつつある。昨年7月には、専門部局のソーシャル・プランニング局を創設。上條典夫ソーシャル・プランニング局長は「今人員は47人いるが、観光や新エネルギーなど国の政策に関連して引き合いがすごい。人が足りない状態だ」とうれしい悲鳴を上げる。
上條氏は自局のビジネスモデルをこう説明する。「いきなりビジネスにするのではなく、社会が動き出すことにかかわり、社会に役に立つことを先に考える。それが回り回って利益に跳ね返ってくる感じだ」。
たとえば公共政策キャンペーンでは、行政から得る事務局受託金はさほど大きくない。電通のクリエーターが作った運動のロゴやマーク、ワード等も行政や民間に無料で提供している。実際に稼ぐのはその後だ。
多くの民間企業を巻き込んで情報発信や商品キャンペーンを展開する中で、企業の具体的なマス広告の需要が発生する。そこでより多くのカネを稼ぐのがミソである。これを組織別に見れば、ソーシャル・プランニング局が、企業の関心の高い社会的テーマを耕し、広告需要を創出する田植え係。そして営業局が、直接クライアントから広告の注文をもらう収穫係となる。
収穫は、フード・アクション以外でも始まっている。生物多様性では、5月22日付日本経済新聞で電通買い切りの大々的な広告特集を行ったばかり。オリンピックの東京招致では、タレントの間寛平のアースマラソンを企画し、協賛する企業のCMを集めた多数の特別番組を日本テレビ系列で放映する予定だ。
「社会の合意を形成する局面では今でも、テレビの訴求力は強い。また新聞など活字メディアの信頼感も武器になる」と、上條氏は公共政策キャンペーンがマス広告につながりやすい構造を説明する。
1980年代、電通はロス五輪を契機に権利ビジネスを本格化させ、広告需要を呼び起こす全体的なプロデュースに乗り出した。
「今ではスポーツや映画などの権利ビジネスは数百億円を稼ぐ柱になったが、私のイメージでは10~20年後のソーシャル・プランニング局のビジネスもそれに近い姿になる」(上條氏)。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています