「『誰か』のことじゃない」。そう訴える法務省の人権啓発冊子やホームページから昨年、「性自認」や「性的指向」という言葉が消えた。LGBTQなど性的少数者をめぐり、岸田文雄首相も国会答弁で使っている表現であるのに、なぜなのか。法務省の担当者が理由に挙げたのは、あの法案をめぐる議論だった。【藤沢美由紀】

LGBTQをめぐる説明や関連資料も減る

 法務省人権擁護局の担当者によると、使用を見合わせているのは「性自認」「性的指向」に「性同一性」を加えた三つの言葉だ。法務省は、毎年発行する人権啓発冊子「人権の擁護」やホームページで偏見や差別をなくすよう訴えているが、冊子は2022年発行版から、ホームページは同年10月から扱いを変えたという。

 それまでは「性的指向・性自認(性同一性)」というタイトルで、「性の自己認識と生物学的な性が一致しない人々は、社会の中で偏見の目にさらされ、昇進を妨げられたり、学校生活でいじめられたりするなどの差別を受けています」などと詳しい説明がされていた。

 今は、「性的マイノリティーであることを理由とする偏見や差別により、苦しんでいる人々がいます」と書かれているのに「性的マイノリティー」がどのような人を示すのか、具体的な説明がない。関連する世論調査結果や啓発動画の紹介、救済措置を講じた具体例などがなくなったり、減ったりした。

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https://mainichi.jp/articles/20230307/k00/00m/040/009000c