中国製貨物クレーンは偵察用か 米当局が懸念
「新たなファーウェイになり得る」との声も

米当局者らは、国内各地の港湾で操業している中国製の巨大クレーンが、ありふれた風景の中に潜む中国政府の偵察ツールになっている可能性があるとの懸念を強めている。こうした港湾の中には、米軍が利用しているものも幾つか含まれる。

 米国防総省や国家安全保障当局者の中には、中国の上海振華重工(ZPMC)製の貨物用クレーンを「トロイの木馬」になぞらえる者もいる。こうしたクレーンは比較的しっかりと作られており、安価だが、コンテナの出所や目的地を登録し追跡できる高度なセンサーが搭載されている。このため、世界各地における米軍の作戦を支援するために国内外に輸送される物資に関する情報を中国が入手できるのではないかとの懸念が生じている。

 かつて米スパイ防止活動機関の幹部を務めたビル・エバニナ氏によると、物資の動きを妨害しようとする人物がこれらのクレーンを遠隔で操作することができる可能性もあるという。

 在米中国大使館の担当者は、クレーンに関する米国の懸念は「被害妄想に突き動かされた」ものであり、対中貿易と経済協力を妨害しようとする試みだと指摘。同大使館は「『中国カード』を使って、『中国脅威』論を流すのは無責任であり、米国自身の利益を損なうことになる」と述べた。

昨年12月に米議会を通過した8500億ドル(約115兆6000億円)の防衛政策法案は、運輸省海事局に対し、国防長官などと協議して、外国製のクレーンが米国の港でサイバーセキュリティー上および国家安全保障上のリスクを生じさせていないかを調査し、年末までに機密指定なしの報告書を作成するよう義務付けている。

 ZPMCのクレーンは約20年前に米国市場に入ってきた。業界関係者によれば、同社は西側諸国の企業よりはるかに低価格で、良い品質のクレーンを提供した。ここ何年かで同社は、リアルタイムで各装置を連動させデータを分析するためマイクロソフトなどの企業と連携することで、世界中の自動化された港湾施設における主要プレーヤーへと成長した。

 2017年には当時ZPMCの会長を務めていた宋海良氏が、マイクロソフトのウェブサイトに掲載された動画の中で「以前われわれは機器を売っていたが、現在はシステムを売っている」と語った。同じ動画の中で、当時ZPMC社長だったQingfeng Huang氏は「上海の本社では、すべてのクレーンの監視が可能であり」、問題解決を支援することができると付言した。マイクロソフトは、コメント要請に応じていない。

 ZPMCによれば、同社は現在世界のクレーン市場で70%前後のシェアを確保しており、100カ国以上で機器を販売してきたという。ある米当局者は、ZPMC製の船舶貨物陸揚げ用クレーンの米国の港湾でのシェアは80%近くに達していると話す。

一部抜粋 全文↓
https://jp.wsj.com/articles/pentagon-sees-giant-cargo-cranes-as-possible-chinese-spying-tools-aadd2d03