そのまま48グループのオーディションに応募し続け、気がつくと高校2年生の秋になっていた。
もう進路を決めないといけない時期だが、私は特にやりたいこともなく、勉強もほとんどせず、自堕落に生きていた。
AKB48の一員になりたい気持ちだけは、ずっと大きかった。
だけど、やはりこんな顔では歌やダンスを頑張ったところで書類審査すら通してもらえない。なにか、プラスアルファの武器がないと・・・。

 ふと、決心した。「そうだ、東大に行こう」。私が人よりできることなど勉強くらいしかない。
ならば、せめて日本一の大学に行けば、目に留めてもらえるかもしれない。

 しかし、入学以来ほとんど勉強をしていなかったので、学校の成績は最底辺だった。先生にも絶望的だと言われた。
それでもなんだか、私にはできる気がした。

 そう決心してからは、取り憑(つ)かれたかのように勉強した。毎日、最後まで塾に残って自習し、移動中も食事中も単語帳を眺めた。
心が折れそうになっても、「もしかしたらAKBに入れるかもしれない」と想像したら立ち直ることができた。

 猛勉強の甲斐(かい)もあってか成績はスイスイと上がっていき、やった分だけ成果が実るのを感じて、受験期は意外と毎日が楽しかった。

 しかし、大きなプレッシャーもあった。もし東大に受からなかったら。
早稲田や慶応でもすごいけど、早慶卒のアイドルはすでにいるし、私の顔では東大生くらいにならないと見向きもしてもらえない。
浪人したら、もうアイドルを始めるにしては若くない私にとって、貴重な1年をムダにしてしまう。絶対に、現役で東大に入らないといけない。

 あまりのプレッシャーからか、当時見ていたアニメ『進撃の巨人』に出てくる巨人に追いかけられる夢をよく見ていた。

 そんな中で迎えたセンター試験。十分に対策もしたし、模試の成績もよかった。しかし、私はここで受験期初めての挫折を経験する。

 1日目終了後、国語を自己採点したら200点中、110点だった。東大志望としてありえない点数だ。
こんな点数、国語は苦手科目だったとはいえ、模試でも取ったことがなかった。

 母の前で大泣きし、結局、ほとんど眠れないまま2日目の理系4科目の試験に挑んだ。ここで挽回しないと終わり・・・。
あまりにも緊張して、ずっと足が震えていたようで、次の日、筋肉痛になった。

「1問だって落とすものか」。マークシートに食らいつくように問題を解いた。

 結果、数学を1問だけミスしてしまったが400点中、398点。なかなかの好結果だ。

 なんとか合計点ではそこそこの点数を稼ぐことができ、どうにか正気を取り戻し、2次試験に向けてラストスパートをかけた。