幼稚園制服もジェンダーレス 「時代の流れ」の後押しで徐々に広がる

「自分で選ぶ気持ち、大切に」

長野県長野市の学校法人篠ノ井学園は、市内で運営する4幼稚園共通で、性別によらずデザインや色を選べる制服に一新する。これまでは注文時から男女別だったが、園児や保護者の思いを尊重しながら新しい風を取り入れたい―と決めた。制服や日中に着るスモックなど、指定用品が比較的多い幼稚園。県内の中学校や高校ではここ数年、性差を感じさせにくくする「ジェンダーレス制服」導入が進み、幼児教育の現場でも慣行を見直す動きが出ている。

 同法人によると、新制服を着るのは今春の入園児から。ズボンとスカートは男女の指定をなくし、各家庭で選ぶ。夏服の白シャツのボタンは紺、ピンク、サックスブルーの3色とし、胸元に施す学園名の刺しゅうも3色から好みで選べるようにした。

 従来の制服は篠ノ井幼稚園が独自デザイン、南長野、東長野、俊英の3幼稚園は共通だった。どちらも約20年ぶりのリニューアル。2021年11月から職員で検討を重ね、着心地の良さや脱ぎ着のしやすさに加えて「時代の要請を捉えた多様性」を重視した。全国の6社から提案を受ける中、ジェンダーレスに配慮したデザインが決め手となり、大阪府の業者を選び、その後に保護者に説明した。

 今月上旬、制服を受け取った篠ノ井幼稚園の新入園児の保護者は「冬は寒いし、女の子にズボンを買ってもいい」「子どもと一緒に選べたのが良かった」と好意的に受け止めた。青木洋子・幼稚園部参事は「制服をなくしたり、ズボンだけにしたりする流れもある中、自分で選ぶ気持ちを大事にしたかった」と話す。

 県内16カ所で幼稚園を展開する信学会(本部・長野市)は本年度の入園児から、男児は水色、女児はピンク色としていたスモックを黄色に統一した。「機能面の改善と合わせ、時代の流れに応じた配慮が必要」と本部の担当者。ボタンの位置が左前、右前と男女で分けていた制服の上着も左前に統一した。

 上田市のいずみ幼稚園は18日の卒園式で、卒園児の胸元に付ける花形の飾りを全員同じピンク色にする。男児は青色、女児はピンク色にしていたが、「ピンクが好きな男の子もいる」。制服はもともと上着のみで、男女に違いはないという。

 学校法人篠ノ井学園はジェンダーレス制服への一新を、着る物を通じて子どもの心を育む「服育」の一環と位置付ける。ただ、こうした事例はまだ少数とみられる。上伊那郡内の幼稚園長は男女別の制服を支持する保護者の声もあるとし、「一気に替えるのは難しい」と話している。
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