“歌ってみた”って……著作権は大丈夫?
https://www.snrec.jp/entry/special/utattemita_copyright


https://www.lsclaw.jp/sharesoft/minji/r040420.html
「基礎とすべき販売価格」の認定

被告が被った損害を算定するためには,後述のとおり,著作物であるアダルト動画の販売価格が
いくらなのかが関わってきます。

この損害額算定の基礎となる動画の販売価格の認定については,
原審の認定を維持しつつ,一部高裁によって変更されています。
以下は,原審判決から引用しつつ,高裁変更部分を青字にしています。
(控訴審判決書17ページ,原審判決書27ページ)。

ア 原告X1らが本件各ファイルをBitTorrentにアップロード可能な状態に置いたことにより,(中略)
本件著作物を1回ダウンロード・ストリーミング販売する機会を失ったということができるから,
本件著作物ダウンロード及びストリーミング形式の販売価格(通常版980円,HD版1270円)を
基礎に損害を算定するのが相当である。

そして,被告は,DMMのウェブサイトにおいて本件著作物の
ダウンロード・ストリーミング販売を行っているところ,被告の売上げは上記の販売価格の38%であると
認められるので(弁論の全趣旨),本件各ファイルが1回ダウンロードされる都度,
被告は,通常版につき372円(=980×0.38),
HD版につき482円(=1270×0.38)の損害を被ったものということができる。

(中略)

本判決は,逸失利益を算定する基礎となる販売価格を,DVD等の販売価格ではなく,
ダウンロード・ストリーミング形式の販売価格にすべきであると判示しています。

また,損害となるべき逸失利益は,被告(著作者・制作会社)が得られたはずの利益ですから,
原告ら(ユーザー)による送信可能化がなかったとしても得られなかった利益までは含まれません。

そのため,ダウンロード・ストリーミング形式の販売価格に,
被告がダウンロード・ストリーミング販売によって得られた利益率(本件では38パーセント)を
乗じた金額が,損害(逸失利益)額となると判示しました。

なお,本件では,アダルト動画に通常版とHD版が存在しているため,
それぞれについて基礎となる販売価格が異なると認定されています。

原告らの賠償すべき損害賠償額の認定

本判決では,損害(逸失利益)額を,以下の算式で算出しています。

【ダウンロード・ストリーミング形式の販売価格 ×
被告がダウンロード・ストリーミング販売によって得られた利益率 ×
アップロードの始期からアップロードの終期までの間において推定されるダウンロード回数】

原告ら(ユーザー)が負う損害賠償額は,本判決別紙「損害額一覧表」の「損害額」欄に記載されています。
1万6000円から9万4000円ほどの損害賠償額とされています。