弾薬不足のウクライナ軍、バフムートで慎重にロシア軍を攻撃

ウクライナ東部の要衝バフムートの南北で戦闘が激化している。ロシア軍の連隊は時間、そして衰えつつある戦闘力をにらみながら廃墟と化したバフムートを包囲し、ウクライナ軍の守備隊を突破しようと必死だ。

一方、ウクライナ軍はバフムートの最も防御しやすい場所に陣取っている。重砲の在庫が少なく、できるだけ少ない武器で多くのロシア軍の兵士を殺すべく、慎重に標的を選んでいる。

東部ドンバス地方ドネツク州の最前線となっているバフムートの戦前の人口は7万人。この地で貴重な軍事資源を最も効率的に活用し、最終的に勝利を収めるのはどちらなのか。

3月19日かそれより前に行われた、バフムートのすぐ北に位置するヤヒドネのロシア軍の哨戒基地への目覚ましい襲撃は、ウクライナ軍が攻撃を精選していることを強調している。ウクライナ軍第93機械化旅団のドローンが監視する中、強力な弾薬(おそらくM30/31ロケット弾の一斉発射か翼のある滑空爆弾)がロシア軍兵士がちょうど離れようとしていた多層ビルを粉砕した。

昨春以来、ロシア軍と分離独立派、そして民間軍事会社ワグネルグループの傭兵はバフムートの掌握を試みているが、今のところ失敗している。米統合参謀本部議長のマーク・ミリー陸軍大将は3月15日に「バフムート市内やその周辺で激しい戦闘があり、ロシア軍はわずかに戦術的前進をしているが、大きな犠牲を伴っている」と記者団に述べた。

ロシア大統領府は、バフムートを掌握すればロシア軍と同盟軍が西と北に前進してドンバス制圧を拡大する道が開けると考えているようだ。ウクライナ軍参謀本部にとってバフムートは今後あり得る反撃を前に敵を弱体化させる好機だ。

バフムートの戦いではウクライナ軍、ロシア軍ともに砲弾やその他の弾薬が不足している。しかし弾薬不足はウクライナ側でより深刻なようだ。ウクライナ軍の旅団司令官の1人は「砲弾が壊滅的に不足している」と語った。一発一発が大事だ。

ウクライナ軍がどの兵器でヤヒドネの建物を狙ったかはまったく不明だ。親ウクライナ派の情報筋の一部は、その兵器は米国が最近ウクライナに供与した、翼が付いたGPS誘導式の統合直接攻撃弾(JDAM)の1つで、ウクライナ空軍はそれを旧ソ連製の古い戦闘機に装着したと考えている。

ウクライナ軍のパイロットはロシア軍の防空網を避けるために木の高さほどで飛行し、最後の瞬間に角度を変えて長距離誘導爆弾を5~10マイル(約8~16キロ)先、あるいは高度と速度によってはさらに遠くの標的に発射することができる。米国防総省のローラ・クーパー副次官補は1月に「これはウクライナが保有する航空機を可能な限り効果的なものにするための、我々の取り組みの最新のものに過ぎない」と記者団に語った。

ウクライナが統合直接攻撃弾を何発保有しているかは明らかではない。在欧米空軍司令官のジェームズ・ヘッカー空軍大将は2週間前、ウクライナ軍は「2、3回の攻撃を行うのに十分な攻撃弾を持っている」と記者団に語った。

その後ウクライナ軍の統合直接攻撃弾の在庫は増えたかもしれないが、精密爆弾はまだ不足している可能性が高い。ウクライナ軍がバフムート近郊の建物を精密爆弾で狙った可能性もあり、これは同市の重要性を強調している。犠牲者が増え、物資が不足する中でも、1年以上続くこの戦争の両陣営はバフムートで勝利を収めようと懸命になっている。

https://forbesjapan.com/articles/detail/61811/page2