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コロナ禍でも小さな子に流行している「ライノウイルス」感染症とは

すっかり春になりました。それとともにコロナ消えて・・・くれればうれしいですが、どうでしょうか?春から初夏にかけて行事や行楽シーズン真っ盛りですが、なんか微妙ですね。先月にフォーカスしたコロナワクチンの国民全体への早期普及がコロナ制圧のカギになりそうです。

さて、コロナが出現してから、多くの子供さんは、感染症にかかることがぐんと減ってビックリされた方も多いと思います。ところが、です。3月に入ってから、微熱や咳で受診される、とくに乳幼児のお子さんが急に増えてきましたね。そして先月15日、東大医科研から、10歳未満のお子さんは、コロナでも「ライノウイルス」感染症だけはむしろ増えた、というプレスリリースがありました。ほとんどのウイルスが消えたと思っていた矢先の驚くべき発表でした。

そこで今月は、コロナ禍にあっても影響されず、今後大いに注目されるであろう「ライノウイルス」にフォーカスします。



今月のフォーカス コロナ禍でも小さな子に流行している「ライノウイルス」感染症とは



1.いわゆる風邪とはなんでしょうか?

2.どんなウイルスが風邪を起こすのでしょうか?

3.新型コロナのパンデミックで、風邪のウイルス流行パターンが変化しました

4.どうしてライノウイルス感染症だけが、コロナ禍の中で消えなかったのでしょうか?

5.今年の春のライノウイルスの検出状況は?

6.ライノウイルスは喘息発作を誘発します

7.おまけ:ライノウイルスが感染したら新型コロナウイルスが感染しにくくなる



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1.いわゆる風邪とはなんでしょうか?

こどもはたくさん風邪をひくことは常識です。風邪とはそもそも何か・・・悪魔が吹く邪悪な風によっておこるものとされ、風邪(ふうじゃ)といわれていたそうです。明治時代になり、「かぜ」と呼ぶようになりました。かつて九州大学の小児科の大教授で遠城寺式乳幼児発達検査法の発案者、遠城寺宗徳教授(なんと大分県出身)の母親向け育児書を読んだことがあるのですが、先生がそれを書かれた1960−70年代までは、風邪は寝冷えや季節の変わり目などの環境変化に適応出来ない場合におきる、と書かれており、1990年代に医者になった私は、「えーマジで」と思ったことがありました。一方、研修医時代、小児救急界の大御所で私の臨床の師である北九州市立八幡病院の故・市川光太郎院長の外来診療の陪席についていましたが、先生も風邪の子に親に、「寝冷えだよ」といつも説明されていましたのでそれも一理あるか、と思ったりしていました。

そういうこともあるのかもしれませんが、現代では風邪は主に「ウイルス感染による上気道炎」とみなされています。上気道炎とは、いわゆる「のどから上」の粘膜に主にウイルスによる感染で炎症を起こした状態です。のど、鼻の粘膜でウイルスが増えて、体がウイルスに対抗して排除する過程で炎症が起きて刺激となり、鼻水、咳、腫れ、痛み、熱などいわゆる風邪の諸症状がでる、というわけです。炎症によりウイルスに感染した粘膜の細胞が壊され修復されて、ウイルスに対する免疫ができて症状が収まってゆきます。