巨大書店の先駆け「八重洲ブックセンター」の本店(東京都中央区八重洲)が周辺の再開発のため、44年間にわたった現店舗での営業を3月末で終える。5年後の2028年度に完成予定の複合施設に入居予定だが、「ビルが丸ごと本屋さん」という光景は見納めで、惜しむ声が寄せられている。

 東京駅八重洲南口を出ると、すぐ目に入る八重洲ブックセンター本店(地下1階、地上8階)は約150万冊もの在庫を備えてきた。現在は「44年間の感謝をこめて」と各種企画を展開中。1階の柱には作家らが「ありがとうございました!! すぐ帰ってきてね!!」(川上未映子さん)などと言葉を書き込み、壁には「棚の隅々まで、思い出」など利用客からのメッセージが張られている。
八重洲ブックセンターは、教養人として知られた鹿島建設元会長の鹿島守之助の「どんな本でもすぐ手に入る書店がほしい」という遺志を受け、同社旧本社跡地の現在地に1978年9月に開店した。

当時は巨大書店に対する書店業界の反発もあり、計画より規模を抑えながらも蔵書約100万冊の日本最大の書店として誕生。2000年代までには現在の「ビル丸ごと書店」となった。東京駅前という立地で、上京時に立ち寄るという地方の客からも親しまれてきた。

 八重洲地区は今月10日に複合施設「東京ミッドタウン八重洲」が開業するなど大型再開発が進行中。八重洲ブックセンターは、ミッドタウンに隣接する再開発計画地内にあり、28年度完成の43階建てビルに入居予定。その間は仮営業を目指しているが、現時点では未定という。

 営業終了が近くなったこともあって千葉県茂原市から来店した特定行政書士の大多和美喜夫さん(70)は、開店当初から通ってきた。「書店の成り立ちの志から素晴らしいと思ってきました。ここはまさに知の宝庫。職業柄、ビジネス書を購入することが多かったが、ここに来るといろいろな本との出会いがあって、ネット書店では得られない学びがあった。今とあまり変わらない形で再開していただけたら」と惜しむ。
 ネット書店の隆盛などで全国的に書店の減少が続く中、都心部でも最近、渋谷のMARUZEN&ジュンク堂書店、上野駅ビル内の明正堂書店などの大型書店が相次いで閉店した。三省堂書店神保町本店は建て替えのため仮店舗での営業となっている。

 「(ネット書店の)影響がなかったわけではないが、左右されず、お客さまのための店づくりに努めてきました」と八重洲ブックセンター広報の内田俊明営業部マネジャー(54)。「店頭で声をかけていただくなど、あらためて多くの方に親しんでいただいてきたと感謝しています。現在、新本店に並んでいてほしい『未来への一冊』を店頭やウェブで募集しているので、お寄せください」と呼びかけている。
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