日本アニメの人気が世界に拡大するなかで、従来と異なる地域からのビジネス的関心が強まっている。なかでもいま注目されているのが、中東やアラブ圏である。
 2023年3月28日、サウジアラビアのリヤドに本社を持つメディアグループMBCグループは、日本アニメブランド「MBCアニメ(MBC Anime)」の立上げを発表した。MBCアニメはアニメ作品のライセンス、プロモーション、制作を事業とする予定だ。運営にあたっては、日本マンガ・アニメに経験が深いTOKYOPOP創立者でCEOのスチュアート・リビィ氏が協力する。

 MBCグループは中東・北アフリカ地域で最大のメディアグループで、数々の放送局やエンタテイメント企業を束ねる。近年はアラビア語圏最大の配信プラットフォーム「シャヒード(Shahid)」の成長が注目されている。22年12月には東映アニメーション、アニプレックス、テレビ東京とのパートナーシップ拡大と『ONE PIECE』や『ソードアートオンライン』、『BLEACH』などの配信権獲得も明らかになっている。
 「MBCアニメ」はこうしたアニメ事業をより発展させたものになる。日本アニメに特化して、クオリティの高い作品の製作・出資も目指している。まずは今後数年を最初の投資段階として、そのなかで日本の主要なアニメスタジオと関係を構築する。その後はさらに事業を拡大するとしている。
 
 MBCグループのCEOであるサム ·バーネット氏は「アニメとマンガは中東と北アフリカで絶大な人気を誇っています。特にサウジアラビアはこの地域を牽引する存在です。近年はこうしたジャンルのイベントや活動も急激に広がっています」とする。
 またスチュアート・リビィ氏は、「ここ数年、MBCのチームと仕事をしたことで、彼らの作品に対するアプローチに感銘を受けています。日本での長期的な関係を築き、2社が協力し合うことで大きな成長の可能性が生まれると信じています」としている。

 2010年代のグローバル規模の配信プラットフォームの普及が、日本アニメの世界での認知度と人気を引き上げたと言われる。従来から人気のあった北米、西ヨーロッパ、東アジア以外への広がりは特に大きい。なかでも中東は近年、急速に盛り上がっている地域である。
 今回はさらにそのなかから、地域の配信プラットフォームが独自に日本アニメにアプローチする動きとなった。また放送や配信権だけでなく、製作や投資に目を向けているのも、資本力の豊かな企業だけに今後の動向が注目される。中東のメディアの巨人が日本アニメの新たな主要プレイヤーになるのか、業界内外から関心を呼びそうだ。

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