インドでは、ロシアからの肥料供給が途絶えるとの懸念が台頭。政府と銀行の関係者らによると、インドの国営銀行にロシアの銀行・企業のルピー口座を開設させ、貿易決済に使う計画がある。

ブラジルのボルソナロ大統領は、ウクライナ問題に関してブラジルは中立の立場を取ると述べた。

中国・浙江省商工会議所のデン・カイユン会頭は、中国とロシアは5年前に「脱ドル化」に着手しているため、SWIFTを使わずに取引をすることは大きな問題にならないと述べている。

デン氏は「大手銀行では最近、元とルーブルで決済するのが普通になった。われわれビジネス界の人間は既にそれに慣れている」と語り、ロシア国民の間で人民元の人気が高まっていると付け加えた。

<SWIFTの代替手段>

制裁を機に、ロシアと中国の企業の間では、ロシアに子会社を持つ中国の銀行に口座を開く動きが広がっているという。 

モスクワで活動する弁護士である中国企業の代表者は、この動きについて「SWIFTが唯一の決済システムというわけではない。このルートが遮断されれば、経済人は代替手段を探す必要がある」と説明した。

「輸出業者は今、(ロシアとの)決済通貨に元を好んで使うようになった」と中国国営銀行のある関係者は述べた。こうした取引の一部は先週までユーロかドルで決済されていたという。

別の中国国営銀行の関係者は、西側の制裁の詳細がまだ明らかではないため、同行は状況を注視するとともに、顧客にはロシアとの貿易決済に元を使うよう勧めていると語った。

昨年上半期の時点で、既に中国の対ロシア輸出の28%が元で決済されていた。両国はドルへの依存を減らす取り組みを強化し、それぞれ独自の国際決済制度の開発を進めてきた。

今回の危機によって、その流れが加速するかもしれない。

ファウンダー・セキュリティーズのダン・コンユー氏は、SWIFTからロシア銀を排除する制裁は「脱ドル化を加速させる一里塚」になると指摘。「短期間でSWIFTに取って代わるのは難しいが、今回の出来事は長期的に元の国際化にとって大きな追い風になる」と語った。

<広がる脱ドル化>

脱ドル化の取り組みは、貿易に限った話ではない。

投資会社のカデラス・キャピタルは、ロシア・中国間の証券投資を後押ししてきた。マネジングディレクターのアンドレイ・アコピアン氏は、ロシア中央銀行が元建て資産への投資を増やしていることについて「ロシアの投資家の間で、人民元の人気を高める最良の方法だ」と賞賛する。

昨年6月時点で、ロシア中銀の外貨準備に占める元の割合は13.1%と、2017年6月のわずか0.1%から大きく増えた。ドルの割合は46.3%から16.4%に下がっている。

アコピアン氏は「貿易と投資に関して言うなら、両国が米ドルで取引しないことには大きな利点がある。米ドル建て取引は二重に換算する必要性に加え、昨今では他の難点もある」と話した。

だが、多くの中国企業は足元で、対ロ制裁による痛みを味わっている。ルーブルが急落し、貿易契約がほごにされているからだ。

ある弁護士は「今はだれもが既存のビジネスを維持すること、あるいは縮小することに専念している。新規ビジネスについて語る者はいない。中国の顧客を含め、あらゆる方面から聞こえてくるのは、そういう話だ」と述べた。

ジ・アジア・グループの上席顧問、ハンシェン・リン氏によると、西側の対ロ制裁に伴い、中国の銀行は取引相手から以前より厳しく精査されるようになる可能性がある。

「全ての中国の銀行は、米ドルを精算するグローバル銀行から、制裁に関係する相手先との取引に関わっていないか尋ねられるようになると覚悟している」とリン氏は説明。「中国の銀行が、制裁対象の取引と非制裁対象の取引をどう分離するのかが見どころだ」と語った。

(Winni Zhou記者、Andrew Galbraith記者, Samuel Shen記者 in 上海、Ma Rong記者 in 北京)