――お仕事をするようになってからも、おとなしい性格は変わらず?

平野 あまりにもしゃべらないから、中学生の時には学校で「綾波レイ」と呼ばれたこともありました(笑)。
自分の席でずっと本を読んで、休み時間になるとすぐ図書室に籠もってました。

――本を読むのはお好き?

平野 うちの家系、出版関係の人間がいて、祖父は出版社で井上靖さんの原稿取りをしていたんです。
父も父の弟も作家さんの名前をいただき、私の名前の「綾」は、三浦綾子さんから取ったと聞きました。
だから生まれた瞬間から、本に囲まれていたんですよね。
友達がいなかったから本が話し相手で、本ばかり読んでいましたね。
大事なことは全部、家でも外でも本から学びました。

――中学生時代には何を読んでいましたか?

平野 その頃から根性が曲がり出したので、サルトルばっかり読んでました。
サルトルは途中で思想が変化していくんですけど、私はすごく頑固で融通が利かないところがあるので、その柔軟さにむしろ衝撃を受けました。

――哲学書なんですね。もっと物語的なものかと思いました。

平野 物語的な作品でいちばん好きなのは『エレンディラ』ですよ。

――ガルシア・マルケス。ノーベル文学賞受賞作家ですね。

平野 あまりに好きで、スペイン語版の映画を英語字幕で観ていました。
まっ白な砂漠で青空の下で逃げ出す、あの『エレンディラ』のラストみたいな人生を送りたいです。

――平野さんが吹き替えをやったディズニー映画『ミラベルと魔法だらけの家』(ミラベルの姉イサベラ役)は、ガルシア・マルケスの『百年の孤独』にも通じると感じました。黄色い蝶も出てきますし。

平野 私もすごく大好きな作品です。コロナ禍になってからは『コレラ時代の愛』を読んでいました。

――話を中学生時代に戻しますと、図書室が居場所だった?

平野 図書委員になって、本の買い出しで自分が読みたい本ばかりをおすすめして、先生に怒られたこともありました。当時は夢枕獏さんにハマっていて……。

中略

――ご自身でいちばん逆境と感じたのはいつですか?

平野 2010年から2011年の頃ですね。すごく不思議なんですけど、「ニュースソースはどこにあるの?」って感じのことで、ワーッと騒がれました。
声優の仕事を続けられるように働きかけても、テレビの仕事をするようになったら、「平野は声優の仕事をやりたくないんだ」と、根も葉もない噂が出る。

 そういうときは何を言ってもしょうがないし、「自分のやってないことに答える必要はない」と思って、完全に「知らない」という姿勢を貫き通しました。
分かってほしい人たちに理解してもらえないやるせなさがものすごくて、
いま思うとあれは私のメンタルがいちばんたいへんな時期で、かなり戦いましたね。


全文はソースで
「あんなにおとなしくて、この世界大丈夫かな?」と思われて…35歳になった平野綾の“同級生と話せなかったころ”
https://bunshun.jp/articles/-/61645?page=1