8日に任期を終える黒田東彦日銀総裁は7日夕、多くの職員に見送られながら日銀本店を後にした。職員から花束を手渡された黒田氏はお辞儀をし、笑顔で大きく手を振って車に乗り込んだ。拍手が鳴り響く中、黒田氏は車の中からもにこやかに手を振り続けていた。

黒田氏の総裁在任期間は10年超と歴代最長。7日午後には記者会見に臨み、退任後の生活について「フルタイムの仕事をする気は全くない。できたらどこかの大学で教えることは考えたい」と語った。(2023/04/07-19:42)

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黒田日銀の遺産を巡る最大の難題として、政府の低金利依存が挙げられるかもしれない。

日本の公的債務残高は対国内総生産(GDP)比264%と、先進国で突出して高い。黒田総裁就任以降、国債発行残高は40%増加したが、超低金利のおかげで年間の債務返済コストは9%増にとどまった。

23年度予算は再び過去最大を更新しており、植田次期総裁が任期中に緩和策を見直すにしても、かなり緩やかに進めるよう迫られるだろう。

元日銀審議委員で現在は野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、「財政規律の緩みは日銀が出口を検討するに至った場合に課題となる」と分析。「植田新総裁の一番大きな使命は大惨事を引き起こさないことだ」と語る。

最終的に歴史が黒田総裁をどう評価するかは、後任の植田氏が一連の課題にうまく対応できるかに大きくかかっている。

ようやく見え始めたインフレの兆しが持続的な2%の物価上昇につながり、植田新体制が秩序ある出口を何とか探り当てることができれば、黒田総裁時代は成功だったと評価されるだろう。

他方で、物価上昇率が再び勢いを失ったり、逆にインフレが行き過ぎて手に負えなくなったりして、植田次期総裁が良好な市場を維持できなければ、植田氏と共に黒田総裁の評判も落ちることが考えられる。

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