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便器に付けるだけ、自宅でも尿検査できるAI装置 中国スタートアップが開発

IoT技術の発展やコロナ禍による健康モニタリング意識の高まりに伴って、医療サービスの場面は医療機関から家庭へ移行しつつある。

2020年に設立された「杉木未来(Shanmu Biotech)」は、デジタルマイクロフルイディクスと人工知能(AI)アルゴリズムをベースに、尿中代謝物の分析を通じてユーザーの健康状態をモニタリングする自動尿検査装置を開発した。

共同創業者で企業向け事業責任者の潘宇傑氏によると、現在市場に出ているウェアラブル端末のほとんどは体表をモニタリングするのみで、代謝をモニタリングするのは難しいという。

ヒトの尿に含まれる600種類以上の代謝物は、肥満、がん、炎症、神経系疾患、感染症などの健康状態と関係している。また尿検査には、定期的な健康モニタリングのコストを下げ、個人に合わせた健康管理や診療のプランを作成しやすいという特長がある。

同社の尿検査装置はマウスほどの大きさで、あらゆる便器の内側に設置できる。尿の温度に反応して作動し、光学検査技術によって尿に含まれる15種類以上の成分を収集・分析する。装置には15個の検査試薬カプセルが内蔵されており、1度の検査に使う試薬の量をマイクロリットル単位に抑えることで尿中代謝物の迅速な分析を可能にした。分析結果はアプリに送られる。

装置はユーザーが手を触れなくて済むように、便器外側に設置する無線端末から8cm以内の距離まで非接触で電力が供給される。また、内蔵の検査試薬は半年ほど使え、消耗品は専門スタッフがユーザー宅を訪問して交換する。

AI個別化医療のデジタルツイン構築において、自社開発のアルゴリズム、バイオテクノロジー、ハードウエアが同社の強みとなっている。

同社のAIアルゴリズムモデルは代謝などの生理指標をもとに、家庭での尿検査データが誰のものかを判断できる。また、装置が毎日収集する代謝データは日常の飲食や生活スタイルと合わせて、尿糖や尿酸といった指標の変化をフィードバックするため、ユーザーは早期に健康リスクに気付いて予防策を講じることができる。ユーザー個別のバイオデータベースにフィードバックされる周期的な身体状態は将来的に、医師による診断や医療ケアの参考となるだろう。

行政機関の地域住民向けサービスや臨床現場即時検査(POCT)分野などの政府・行政機関および企業向け事業を通じて、同社はすでにユーザーの意識付けを始めている。現時点で、販売価格1999元(約3万8000円)の装置は一般消費者への予約販売額が1600万元(約3億円)近くに上った。

今年は中国の「国家二類医療器械認証」を取得する計画で、次の資金調達にも着手したという。調達資金はハードウエアの試作、アルゴリズムのトレーニング、バイオテクノロジーと次世代がんスクリーニング検査装置の開発に充てられる。

潘氏は、同社の装置を導入する家庭が増えれば、匿名化されたユーザーデータのフィードバックにおいてAIアルゴリズムの精度が上がると説明。「当社は北京大学や復旦大学などの研究室とも提携しており、将来的にアルゴリズムモデルによる症状に応じたケアの効果はさらに高まるだろう」と話した。