https://news.denfaminicogamer.jp/kikakuthetower/230410a#i-5
AIを使った物語づくりでは100点を見極める人間の価値があがる
梅田:
 佐渡島さんはすごくAIに興味を持たれている印象があるんですけど、AIによって漫画制作などの物語づくりはどういうふうに変わっていくと思いますか?

佐渡島:
 めっちゃラクになると思うよ。そうなると、こだわれる部分が増える。誰もこだわろうとも思っていなかった細部までこだわれるようになるから、もっと面白い作品がたくさん出てくると思うし、もっと僕らの感情に寄り添った物語ができるんじゃないかな、と。

梅田:
 めちゃくちゃ面白い見方です。僕自身はAIに技術的なことを頼ると、同じような作品ができあがってくるようなイメージが漠然とあるんですけど、そうではないということですよね?

佐渡島:
 だってさ、たぶん僕らが日常的に使っている言葉をリストにすると、1万語も使っていないと思う。その組み合わせで僕らはしゃべっているじゃん。それと同じで、物語をイチから作るのが大変だから、アンケート上位の作品と似たようなものばかりになるじゃん。AIを使って1日に300個も物語が作れるとしたら、AIにヘンな指示を出すヤツも出てくるだろうし、まったく見たことがない物語がもっともっと出てくるはず。

梅田:
 逆にバリエーションは増える、と。

佐渡島:
 素材が圧倒的に増えるよね。なんと豊かな世界が待っているんだろうと思うし、もうワクワクでしかないわけ。しかも目の鍛え甲斐があるんだよね、編集者として。いままでは納期を守って作るだけでいっぱいいっぱいだったし、それだけで評価されたわけじゃん。ウェブトゥーンもいま週刊連載できるスタジオなんてほぼないでしょ?

梅田:
 たしかに。

佐渡島:
 AIを使えば週刊連載なんて余裕できますよ。
その上でどうやって儲けるのか、どうやって話題を作るのか、とこだわれるところがもっと増えてくる。編集者はその作品に対してなぜこれが面白いのか、なぜこれはダメなのかを説明できないといけない。それができるようにならないと、いい作品をプロデュースできないじゃん。AIが80点以上で全部作ってくれる、その中で100点を見極める人間の価値ってもっと上がると思う。

梅田:
 なるほど。逆に既存の漫画家さんはAIを使いこなせないと、AIは脅威でしかないと思うんですけど、漫画家さんたちはAIをどう捉えればいいですか?

佐渡島:
 漫画家は目がいいからね。

梅田:
 そうか、自分が作れるから。

佐渡島:
 そう。だから、AIをいち早く使った漫画家は勝つ。まあ、ヘンなプライドを持ってなかなかAIを使わなかった漫画家は素人にも負けるだろうね。