ニュージーランドでイスラム教の礼拝所が襲撃され50人が死亡した事件では、容疑者が銃を乱射する様子をSNSの機能を使って生中継したものとみられ、動画はその後も拡散し続けています。アーダーン首相はSNSの運営企業に対して、こうしたことが再び起きないよう、運用の見直しを求めていく考えを示しました。

ニュージーランド南部のクライストチャーチで今月15日、2か所のモスクが襲撃され50人が死亡した事件では、容疑者がSNSの生中継ができる機能を使って、銃を乱射する様子をみずから配信したとみられています。

動画はおよそ17分におよび、SNSの運営企業がいったん削除したものの、一般の利用者によって繰り返し投稿され、今も拡散が続いています。

ニュージーランドのアーダーン首相は、事件後初めて開かれた19日の議会での演説で「容疑者は今回のテロでさまざまな目的を追求している。悪名をとどろかせることも、その1つだ」と述べ、動画の拡散は容疑者と同じ過激思想を持った人間の追随をもたらすおそれがあると指摘しました。

そのうえで「SNSに投稿された内容について、運営企業が責任を問われないなどということはありえない」と訴え、SNSの運営企業に運用の見直しを求めていく考えを示しました。

首相「差別や恐怖をもたらす相手に決してドアは開かれない」
事件後初めて開かれた19日のニュージーランド議会には、イスラム教の宗教指導者が招かれ、冒頭、アラビア語で祈りの言葉をささげました。

続いて、黒いスーツに身を包んだアーダーン首相が登壇し、13分間にわたって演説しました。
首相は、初めにアラビア語であいさつしたあと「事件のあった金曜日は、ニュージーランドにとって最悪の日となったが、被害者の遺族にとっては最悪という言葉では表現しきれない日となった。私たちは遺族の悲しみを完全に共有することまではできないかもしれないが、ともに歩むことはできる」と述べ、遺族にあらゆる支援を尽くすことを誓いました。

そして、容疑者の男について「テロの目的の1つは、悪名をとどろかせることだ。だから私は今後、男の名前を言うことはない。むしろ命を奪われた人たちの名前を呼ぼう。ニュージーランドは男に何も与えない。名前もだ」と述べたうえで、容疑者に勇敢に立ち向かった人たちとして、パキスタン出身の男性と、アフガニスタン出身の男性の事件当時の状況を名前とともに紹介しました。

また、銃規制の強化については「内閣はきのう、事件から72時間以内におおまかな決定を行った」と話し、予定どおり来週月曜日までに法律の改正案を公表できる見通しを示しました。

最後に「私たち国民は200の民族と160の言語で構成されている。私たちはいつでも外にドアを開いている。しかし、事件で変わったのは民族差別意識や恐怖をもたらす相手には、決してドアは開かれないということだ。今週金曜日には再びイスラム教徒が集まる。彼らが再び礼拝を行えるようみんなで支えよう」と締めくくると、議場は拍手で包まれました。